男子フルーレで、昨夏インターハイ(全国高校総体)王者の飯村一輝(16=京都・龍谷大平安高2年)が2年連続の銅メダルに輝いた。

初戦で今大会の最注目選手、12年ロンドン五輪(オリンピック)団体銀メダルの三宅諒(29=フェンシングステージ)と対戦。序盤からスピード感あふれる攻撃を重ね、カウンター攻撃が得意の三宅からポイントを連取。15-10で勝ち切った。

続く2回戦も格上を食った。日本代表の主力で、国内ランキング1位の敷根崇裕(22=ネクサス)に大逆転勝利。一時は2-9と最大7点差のリードを許したが、そこから6連続ポイントで肉薄。最後は、あと1ポイント取られれば敗戦となる12-14から3連続得点で勝利を収めた。「緊張でリードを広げられて、もう追うしかない立場。あがくだけ。絶対に勝つぞ。そういう強い気持ちでいけた。力が出せた」と納得の表情だった。

しかし、この2戦で力尽きた。準決勝で、昨年優勝の永野雄大(21=中大)に5-15で完敗。持ち味のスピードを封じられる展開に「今年こそは、と思っていたので、去年と同じ成績では。悔しい気持ちでいっぱいです」と振り返った。

「今年こそは」と言った通り、16歳には明確すぎる目標があった。02年に史上最年少の17歳で全日本を制した母校の大先輩、現在は日本協会会長の太田雄貴を超えることを狙ったが、かなわなかった。「1つの目標である『太田さん超え』のためには、今年の全日本優勝が第1関門だったんですけど、また結果に差を広げられてしまった。やっぱり高校2年で日本一はすごい。1歩でも近づこうと努力してきたけど、まだまだ力不足。来年こそ」と達成は持ち越しとなった。

コーチを務める父の栄彦さんは、太田雄貴の師匠でもあった。初戦で倒した三宅から「飯村選手は、太田先輩のDNAを受け継ぐ選手。直系」と評されたように「太田2世」として、今後は東京五輪の日本代表メンバー入りに急浮上する可能性もある。「お父さんが太田会長のコーチだったので、いいところは聞いて盗みたい。キレであったり、得意のロングアタックであったり、そこにカウンター攻撃などを自分なりにアレンジして、より高みを目指したい」と話した。

昨夏は高校1年でインターハイ優勝。こちらも太田以来2人目となる3連覇を目指していたが、今夏は新型コロナ禍で史上初の中止になった。「3連覇という夢がなくなって、目標を見失いそうになった日もあったけど、ライバルに差をつけるチャンスとも思っていた。父と妹、弟と4人で自宅のガレージで練習を積んできた」。満足はできないが、高校1年から2年連続の全日本3位という成績はしっかり残した。

来週末のインターハイ代替大会「HighSchoolJapanCup2020」(25~27日、神奈川・星槎レイクアリーナ箱根)は出場しない。参戦予定も「コロナの影響を考えて出ないことになりました」。今は練習に集中できる環境を最優先に、全日本の優勝へ、五輪でのメダル獲得へ、そして太田雄貴の先へ。また京都に戻って研さんを積む。【木下淳】