体操で五輪個人総合2連覇の内村航平(31=リンガーハット)が再スタートの一歩を刻んだ。両肩痛などの影響で、6種目を争う個人総合から鉄棒に絞る種目別に専念して臨んだ初戦。H難度の離れ技「ブレトシュナイダー(コバチ2回ひねり)」に挑戦し、バーをつかんだものの次の技につなげられず不完全燃焼。得点は14・200点で6位だった。

苦渋の決断だった。7月29日の代表候補合宿でのリモート取材では、心の内を隠さずに言った。

「実際は6種目で狙いたいんですけど、いまでも6種目でいきたい思いは変わってないですけど、どうしても肩の痛みが取れなくて。苦しい中でやるよりは、痛みが少ない方法で、世界でも評価されている鉄棒でいったほうが、自分としても、サポートしてくれる人のためにも気持ちよく五輪にいけるんじゃないかなと。個人総合、団体を諦めた訳でなく、前向きに考えて、自分が1番輝ける方法がこれしか見つからなかった。結構、悩みましたけどね」。

体操は6種目あってこそ。そんな信念との葛藤が、いまでもある。ただ、この道しかなかった。

1種目に絞ったことで、練習のルーティンから変更した。週2日だった休みを1日にしたり、通し練習をやる回数を週2回から3回に増やしたり。「キング」を作ってきた王道を見返して、新たな道を模索している。「実際に試合をやってないので分からない。これから試合があるはずなので、その中でもたくさん実験をして、あるであろう五輪で、実験を生かしたい」。1つずつ結果を積み上げ、来夏を見据える。