錦織は半年間、日本で何をしていたのか? 男子テニスで世界35位の錦織圭(30=日清食品)が、27日開幕の全仏オープン(パリ)で、昨年8月の全米以来の4大大会に出場する。昨年の全米出場後の10月、日本に戻り右ひじの関節遊離体を除去する内視鏡手術を受けた。今年3月まで国内に滞在し、そのリハビリを契機に一から見直したのがサーブだった。錦織の新たなる挑戦を3回にわたって解き明かす。

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9月8日。オーストリアで行われたジェネラリオープン1回戦で、錦織が375日ぶりに復帰した。第2セットから、ダブルフォールトがらみで自身のサービスゲームを落とし逆転負け。サービスエースが2本で、ダブルフォールトは6本。錦織は「練習と違いプレッシャーもかかる」と振り返った。

錦織がこの1年をかけ、サーブの大改造に着手している。「ゼロから作り替えている感じ」と、まるで初心者に戻った感覚だ。昨年12月で30歳になったが、少しでも長くプレーしたい。「ひじや手首のけがは、サーブが主な原因だった」ことで改造を決断した。

きっかけは17年8月に負った右手首の腱(けん)の脱臼だ。日本テニス協会の高田充男子ヘッドコーチ(51)と話し、主な原因がサーブのフォームにあると判断。高田コーチとのやりとりが始まった。錦織がサーブの動画を送り、高田コーチがアドバイス。しかし、錦織は治療したベルギーでリハビリし、拠点は米フロリダだけに、じっくりと一緒に練習する時間を取れなかった。

今回は日本で右ひじの手術をしたこともあり、ともに国内で十分な時間があった。お互いに「きちんと一からやろう」と投合し、サーブを打つときのグリップ(握り方)や、スイング軌道など基本から見直しが始まった。

高田コーチは「あくまで1番の目的はけがをしないフォーム作り」だという。体に負荷をかけない打ち方になれば、動きが自然になり、自身の持てる力を球に伝えることができる。錦織が19年全米から日本に帰国して、すぐに改造はスタートした。

錦織は19年10月15日に、長年連れ添ったボティーニ氏とのコーチ契約を19年いっぱいで終了することを発表。同月22日、八王子のひじの専門医で右ひじの関節遊離体を除去する内視鏡手術を受けた。その後、本格的にサーブの改造を始めることで、錦織の新たな挑戦が始まる。【吉松忠弘】(続く)

◆全仏オープンテニスは、9月27日から、WOWOWで連日生中継。また、WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信予定。