スポーツ庁長官に今日1日就任する室伏広治氏(45)がインタビューに応じた連載の後編は、新長官としての抱負やビジョンを聞いた。来夏の東京大会を機に、日本のスポーツ人材を「世界中どこに行っても日本人がいる」というレベルにまで海外に送り出し、国際感覚に優れた人材の育成を加速させるべきとの考えを示した。【取材・構成=三須一紀、木下淳】

 

-いよいよ2代目スポーツ庁長官に就任する

「同庁の魅力は競技だけでなく、スポーツを通じ国民の心と体を守っていくことがある。コロナ禍で在宅が長くなり体力が落ちているし、高齢者は顕著。鈴木前長官もスポーツ実施率向上に取り組んだ。私も受け継ぎたい」

-どのようなスポーツ界にしたいか

「感動してもらえるスポーツ界。競技団体1つ取っても同じところを目指してほしい。市民の運動でも気晴らしや喜びに通ずればそれも感動。トップアスリート支援や競技団体の健全性確保もやっていきたい」

-前長官時代にスポーツ界の不祥事が多発し、スポーツガバナンス(組織統治)コードを制定した。その際、スポーツ界の自主性か、国に指導権限をもたせるのかという議論が挙がった。今回はスポーツ界の自主性に重きを置いた制度になったが、スポーツ界出身の室伏長官も同じ考えか

「いろいろな面で自立し健全な競技団体を目指してもらいたい。20年前はガバナンスの議論はされなかったけど、それだけスポーツが注目される時代になってきたということ。感動してもらえるクリーンな環境づくりが求められる」

-将来的に長官職を経て、国際オリンピック委員会(IOC)委員や各国際競技団体(IF)の幹部役員を目指す考えはあるか

「私は人材を送り出す側をやっていきたい」

-その理由は

「海外で日本の重要ポストを増やしていくこともスポーツ庁の1つの役割で、いかに若い人材を輩出していけるか、これが一番の課題。組織委で培ってきたコネクションを生かしたい」

-室伏長官も45歳。まだ若いのでは

「(日本で大きな国際大会を開くには)次の次の世代を考えないと。若い時に国際的なことに興味を持ち、そこから経験を積まないと間に合わない。IOCの開催計画の幹部もそう経験を積んで今、トップに就いている」

-スポーツ庁の施策でできるのか

「まだ入庁していないので分からないが、庁というより日本としてやっていくべきだ。IFの幹部役員だけでなく、IF内の現場スタッフから経験を積む。『海外どこに行っても日本人がいる』という感じにならないと。経験を積んで日本に帰って来てもらい、日本スポーツ界の発展に寄与してもらいたい」(おわり)

◆室伏広治(むろふし・こうじ)1974年(昭49)10月8日、静岡県生まれ。千葉・成田高-中京大-中京大大学院。男子ハンマー投げの日本記録(84メートル86)保持者で00年シドニー五輪から4大会連続出場。04年アテネで金メダル、12年ロンドンは銅メダル。14年6月から組織委SDに就任。日本オリンピック委員会や日本陸連の理事も務めた。187センチ。