異例のシーズンが幕を開けた。今季は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、8校総当たりのリーグ戦を断念。史上初めて、トーナメントで甲子園ボウル(12月13日)出場校を決める。選手はフェイスシールドの着用を義務づけられ、準決勝までは無観客開催。万全の対策を敷いた上での開幕となった。09年に甲子園ボウルを制した磯和雅敏監督(53)が復帰した関大は24-16で京大に逆転勝ち。昨季覇者の立命大は36-3で2部から昇格の桃山学院大に快勝した。

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静けさが雨の会場を包んだ。観客もスタジアムを彩るチアガールもいない。客席はチーム関係者だけ。選手が激しくぶつかる鈍い音が響いた。普段なら鍛え上げた男たち大勢が並ぶサイドラインには、人数制限により60人だけ。全員がヘルメットにフェイスシールドを着用した。試合中にサインを確認するハドルはしても、試合後の円陣はなし。徹底した予防対策が取られた。1941年から始まる関西学生リーグで、未体験のシーズンが幕を開けた。

その第1試合、11季ぶりに関大の指揮を執ったのは、09年に甲子園ボウルを制した磯和監督だった。コロナ禍による活動自粛後、6月から練習を再開。8~9月まで活動できない大学もある中で、1度に練習する人数を30人に絞りながら、継続して調整を続けてきた。全員が集まれないため、テニスボールを片手でキャッチするなど地道な努力を積み重ねてきた。監督復帰後、初の公式戦。古豪京大に逆転勝ちした同監督は「ホッとしました」と漏らした。素直な心境だった。

3-13で追う展開となった第3クオーター(Q)残り3分。敵陣のゴール前9ヤードで相手パンターが落としたボールを4年生LB青根が拾うと、そのまま飛び込んでキャッチ。ファンブルリターンTDを決めた。このプレーに攻撃陣が奮起。第4Qでは2年生RB柳井が逆転のTDランを決めた。青根は「オフェンスもしっかり(練習に)取り組んでくれた。僕らが(ボールを)奪い返したら、得点を取ってくれると信じていた」と勝利の余韻に浸った。

例年とは違う会場の雰囲気で、1発勝負の緊張感もあった。前半は0-10。磯和監督は「予想以上に厳しかった。オフェンスとか、パスとかではなく、全ての面で見直さなければいけない。今日は勝ったというよりも、負けなかったという感覚です」。準決勝(11月8日)は昨季覇者の立命大。11季ぶりの甲子園ボウル出場へ。異例のシーズンを、突っ走る。【南谷竜則】

◆今季の大会方式 昨季までは関西学生リーグの1、2位が西日本代表校決定戦に進出。東海、九州、中四国、北陸の各地区代表とトーナメントで対戦し、優勝校が甲子園ボウル出場権を獲得。全日本大学選手権決勝として、東日本の代表校と対決した。昨季リーグ戦は立命大、関学大が両校優勝。直接対決の結果で立命大が1位、関学大が2位扱いとなり、代表校決定戦で関学大が勝利して甲子園切符を手にした。今季は西日本代表決定戦がなく、トーナメントで決まる関西リーグ優勝校が甲子園ボウルの出場権を得る。