東海大静岡翔洋が静岡聖光学院を14-7で破り、3年ぶり11度目の優勝を飾った。終盤の決勝トライで3連覇を狙った王者を撃破。トップリーグ・ヤマハ発動機の元選手で今春から指揮を執る津高宏行監督(37)が、就任1年目で頂点へと導いた。同校が出場する全国大会の組み合わせ抽選会は12月5日に行われ、同27日に大阪・花園ラグビー場で開幕する。

終了直前に歓喜の瞬間が待っていた。同点の後半32分、敵陣22メートルからのキックパスに反応したSO山田凜太(3年)がインゴールでボールを抑え、勝負あり。直後に東海大静岡翔洋の優勝を告げる笛が鳴った。津高監督は「本当に震えた。うれしかった」。教え子の手で2度、宙を舞った。

選手に寄り添い、チームを作った。今年4月に監督に就任。自宅のある磐田市に家族を残し、週に6日は寮で寝食を共にした。コロナ禍で休校が続く中、できる限りの時間を共有した。「いきなり監督が代わってとまどう部分もある。指導より信頼を築くことに重点を置いた」。ラグビー以外の余計な不安を消した。

「個の力では勝てない」。グラウンドでは、コミュニケーションの重要性を説いた。正確なキックで決勝トライを演出したFB近藤樹(3年)は「練習でやってきた形。『ここだ』と思って(山田に)合図を出した」と言えば、山田も「狙い通り」。新指揮官の下で磨いたあうんの呼吸が、勝負どころで光った。

全国大会まで約2カ月。大阪・啓光学園(現常翔啓光学園)3年時に高校日本一になった指揮官は「まだ未完成のチーム。主にDFの強化が必要。経験を伝えて落ち着いてできるようにしたい」と言った。今度は監督として聖地・花園に挑む。【前田和哉】

○…FB近藤が、全得点に絡む活躍で優勝の立役者となった。後半5分、左サイドを突破して先制トライ。沼津市内の自宅周辺で、妹を相手にイメージを膨らませたステップで相手を翻弄(ほんろう)すると、同32分には決勝トライをお膳立て。コンバージョンキック2本も成功させ、計9得点。試合後、笑顔で記念撮影に納まり「みんなのおかげ」と仲間に感謝した。