アスリートが性的な意図で写真を撮影されたり、会員制交流サイト(SNS)にみだらな文章や画像を拡散されたりする被害にスポーツ界がようやく動きだした。20年以上前から続き、中高生にも広がる問題。元女性トップ選手らが自らの経験を踏まえ、今まで口に出せなかった声を上げた。

引退して7年。2012年ロンドン五輪体操女子代表の田中理恵さん(33)は「変えられる環境にいるからこそ、変えなきゃいけない」との思いを語る。東京五輪・パラリンピック組織委員会と日本体操協会で理事を務めながら、子育てに励む1児の母。現役時代に嫌でも声を抑えていた経験を今と重ね合わせた。

華麗な演技をした選手に贈られる「エレガンス賞」に輝いた10年ごろ、コンビニの陳列棚に並ぶ週刊誌の袋とじとして競技中の写真が販売された。友人伝いに知り「衝撃的だった」。段違い平行棒や平均台で脚を開くとパシャパシャと響くシャッター音。「ここで撮る?と、正直嫌だなあと気にしながら演技をしていた」。袋とじ以来、不適切に使われた写真を目にしないように意識した。

小さい頃はレオタードのデザインに引かれていた。視線に気がついてからは本番以外でレオタード姿にならないように試合直前までジャージーを脱がなかった。脚が長く見えるように工夫されたデザインも、演技後にハイレグになった裾をすぐ直すように。ただ「名前を知ってもらう中で慣れていく宿命なのか」と切り替えた。「自分の目標や夢を達成するんだと、それだけを考えた」

会場で誰が撮影しているのか。「ただ目標に向かって頑張っているだけなのに」。釈然としなかった。カメラマンや記者に対して壁をつくっていた時期も。ネットで販売された写真など時に笑い飛ばしながらも「気にしていないように見えて、実は気にしていたのかもしれない」と思い出す。

今夏に陸上選手が性的画像問題の被害を訴え、スポーツ界が動きだした。「正直、やっとだな」との本音を漏らすものの「行動に移してくれたことはうれしい」と歓迎する。現在は「発言できる環境」に身を置く立場。「自分が撮られている実態から言いにくい部分はあった。引退してから、こういった話をいろんな人にするべきだった」と反省し、今後は声を上げていく覚悟を示した。(共同)