第100回を迎える全国高校ラグビー大会は27日、東大阪市の花園ラグビー場で開幕する。2大会ぶり12度目の出場となる熊本西は、同日の1回戦で早実(東京第2)と対戦。全国的な伝統校を相手に、熊本の県立校が燃えている。

組み合わせ抽選会が行われた5日。昼食をとりながら、その模様をオンラインで見つめる選手たちがいた。相手は18年度、82年ぶりの花園出場を飾った早実。早大に有力選手を輩出する古豪が相手となり、プロコーチとして携わる二ノ丸友幸氏(41)がささやいた。

「4対6かな。今はこっちが4。それは大会までに5対5だったり、逆に6対4にもできるかもしれない。ほとんどのファンが『早実が勝つ』と思っているはず。そういう中で全員の予想を覆したら、かっこいいんじゃない?」

40人前後という選手のうち、中学までの経験者は約6割。寮はなく、地元選手が中心という構成だ。前年度の花園で準優勝を飾った御所実(奈良)などを指導している二ノ丸コーチは、熊本西に対する全国の目を事あるごとに伝えてきた。

「御所の子たちに『今年の熊本西はどうですか?』と聞かれたことはないよ。近畿の強い学校の子たちに、残念ながらクローズアップされていないのが現実」

選手はそろって「悔しい」と言った。

熊本西の最高成績は第79回(99年度)の16強。茗渓学園(茨城)、伏見工(現京都工学院)を下す躍進だったが、以降は年越し(3回戦進出)の経験がない。

新型コロナウイルスにより活動ができなかった今春の約2カ月、二ノ丸コーチと門脇永記監督は2人で「諦める勇気」を共有した。

ミーティングは週1回。あとの6日間の過ごし方は選手に委ねた。日誌のやりとりは行わず「グラウンド練習を再開した時に、どれだけのパフォーマンスを見せられるか」をテーマにした。二ノ丸コーチは言う。

「『やったことを報告』では、うそもつける。目的が指導者満足のチェックになってはいけない。スタッフも状況を言い訳するのではなく(成長に対して)自分たちでコントロールできるところに着眼しました」

一方、ミーティングにはこだわった。オンラインを活用し「どんな人間になるのか」を考える時間から始まり、戦術面では「どんな勝ち方をするのか?」と細部まで話し合った。夏合宿は中止。それでも手応えを二ノ丸コーチは明かした。

「目指していた『セイムページ(同じイメージを持つこと)』ができて、グラウンドに立てました。元々、昨年の花園を逃してから『超高速展開ラグビーを、0から1年間で作り上げよう』と方針転換。グラウンドに立てない間をチャンスと捉えて『セイムページ』を見るための時間に変えられました。あれも、これも、とはしない『諦める勇気』です」

練習は1時間半~2時間と短時間。同じテーマを共有することで、選手からの質問の質も高まってきたという。準備を信じ、伝統校に勝負を挑む。【松本航】