<スピードスケート:全日本選手権>◇30日◇明治北海道十勝オーバル◇女子5000メートル

高木美帆(26=日体大職)が5冠の偉業を達成した。世界記録を持つ1500メートルを1分54秒08の国内最高&リンク記録で圧勝し、5000メートルもリンク新記録の7分7秒33で制した。前日までの500、1000、3000メートルを合わせた国内主要大会初の5種目優勝。22年北京オリンピック(五輪)への期待が高まる強さを発揮した。

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今の高木美の絶対的な強さは、挫折からうまれている。10年バンクーバー五輪に、最年少の中学生で出場。当時は「武器はマイペース。他人と戦うより対自分」と話すなど、天才少女は勝利への執着心を見せずに勝つことができた。

ところが13年12月のソチ五輪選考会では落選。「ちょっと手を抜いてもできる自分が格好いいと。クールぶるところを見せたり、一生懸命やる選手を否定したり。熱くなれなかった」。幼少期から秀でてきたスケートで負けるべくして負けた。挫折というより情けなさでいっぱいだった。

変わらなきゃいけない。人生観は180度転換。どこか俯瞰(ふかん)したような姿は消えた。かつて「勝負意欲がわいてこないことが悩み」と話した姿はどこにもない。18年ピョンチャン(平昌)五輪は金を含む3個のメダル。その後も常に世界のトップを争い、今大会は5冠の偉業。誰にも負けない闘争心が宿った天才の勢いは止まらない。【田口潤】