ノルディックスキー・ワールドカップ(W杯)複合男子は24日、フィンランド・ラハティで個人第8戦が行われ、渡部暁斗(32=北野建設)が今季初勝利を飾り、荻原健司に並ぶ日本人最多のW杯19勝目を挙げた。

前半の飛躍(HS=130メートル)で129・5メートルを飛び2位につけ、後半距離(10キロ)は首位山本涼太(23=長野日野自動車)と1秒差でスタート。過去2度優勝経験がある好相性の場所で強さを見せ逆転で制した。

06年3月の札幌大会でW杯デビューしてから212戦目。積み重ねた優勝回数は、日本人最多タイまでになった。オリンピック(五輪)で14年ソチ、18年平昌と2大会連続で銀メダルを獲得し、17~18年シーズンでW杯個人総合覇者に輝いた日本のエースがまた1つ、勲章を手にした。

コロナ禍で気持ちに変化があった。オフシーズンは地元長野で練習を積んだ。体や技術を見直した。今までの取り組みに疑いを持ってみるなど、試行錯誤する日々を過ごし、初心に帰って考えてみた。「何のためにスキーを始めたのか」。その答えは「上達するのが楽しかったから」。

昔の自分を思い出しながら練習してみると、来年の北京五輪の開催への不安より「まずは自分が上達することを楽しみながら日々探求。(五輪が)あったら楽しい、なければプロセスを楽しめたので良かったという日々」と、前向きな気持ちだけが芽生えた。

そして迎えた五輪プレシーズン。まずは1勝したが、渡部暁は言う。「世界選手権の個人戦で金メダルをまだ取っていない。金メダルが今季最大の目標」。11月9日、第1子となる長男が誕生した新米パパは、やる気をみなぎらせている。

◆渡部暁斗(わたべ・あきと)。1988年(昭63)5月26日生まれ、長野・白馬村出身。3歳からスキーを始め、98年の長野五輪観戦をきっかけに白馬北小4年からジャンプを始め、白馬中1年から複合に取り組む。五輪は06年トリノから4大会連続で出場し、14年ソチ、18年平昌で個人ノーマルヒル銀メダル。W杯は17-18年シーズンに総合優勝。家族は妻と昨年11月に誕生した長男。173センチ、61キロ。

<W杯複合男子の日本人個人優勝回数>

1位 渡部暁斗 19回

1位 荻原健司 19回

3位 高橋大斗 2回

4位 河野孝典 1回