ノルディックスキー・ジャンプ女子の高梨沙羅(24=クラレ)が5日、オーストリア・ヒンツェンバッハで行われたW杯個人第5戦(ヒルサイズ=HS90メートル)でスーツの規定違反により失格となった。ジャンプの世界では度々起こる「スーツ規定違反」。何が原因なのか。1998年長野オリンピック(五輪)ジャンプ団体金メダリストの原田雅彦氏(52=雪印メグミルク監督)が解説する。

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国際スキー連盟(FIS)の規則では「直立姿勢で、スーツ寸法はボディーと一致しなければならず、最大許容差はスーツのあらゆる部分において、ボディーに対しプラス1センチ~3センチ(女子は同2センチ~4センチ)とする」と決められている。シーズン始めに計測し、数値を提出するため、体重の変化などで誤差が出てくるケースはある。そのため「スーツ規定違反」は珍しいことではなく、原田氏は「本人の責任でも、測った審判の責任でもない。我々管理する立場がしっかり管理しないといけない」と話した。

ジャンプは浮力を味方につけ、遠くに飛ぶことを目指すスポーツ。スーツには空気を通す透過率についても規定があるが、選手はルールの中でなるべく風を体に受けたいと考える。同氏は自身の経験も踏まえ「スーツは使用していくとスカスカして、空気をためこまなくなっていく」と解説する。W杯を転戦する高梨クラスだと、年間約20着を使用し、常にベストの状態のスーツで試合に臨んでいる。

珍しくはない「スーツ規定違反」だが、今回の太もも部分での失格は「聞いた事がない」(同氏)事例だ。同氏は「股下をさげる人が多い。だからそこの測定は頻繁にやる」と話す。股下部分が大きければ、それだけ空気抵抗ができるため、ルールの範囲内で“ギリギリ”を狙ってくる選手もいる。同氏は「(太ももは)意図的に広げるところではない」と、今回の高梨にルール違反の意図はなかったと擁護した。

自身は06年トリノ五輪でスキー板の違反で失格を経験している。体重が200グラム足りなかったことが原因だった。だから「あの時から我々日本チームとして、そういうデータをたくさん取って蓄積している」。後輩たちに同じ思いをさせたくはないと願っている。【保坂果那】