佐藤翔馬(20=東京SC)が2分6秒40の日本新記録で優勝し、2分7秒58で2位に入った武良竜也(24=BWS)とともに東京五輪代表に内定した。前世界記録の2分6秒67を持つ渡辺一平(24=トヨタ自動車)は3位で五輪きっぷを逃した。この種目の元日本記録保持者で五輪2大会代表の高橋繁浩氏は、前半のスピードがついた佐藤に金メダルの可能性が広がったとみた。

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佐藤が世界歴代2位の好タイムで、王者チュプコフ(ロシア)を捕らえた。コンスタントに2分6秒台を出していた佐藤だけに、記録更新に驚きはない。素晴らしかったのはは、その内容だ。前半100メートルを、唯一の1分0秒台(1分0秒89)で入った。この大会の100メートルでも優勝するなどスピードが磨かれたのが大きな武器。これが、200メートルでも生きた。

150メートルの折り返しは1分33秒39。チュプコフの世界記録を1秒近くも上回っている。この日はラスト50メートルに33秒かかったが、コンマ5秒は伸ばせるはず。32・5秒でまとめれば、世界記録どころか、初の2分5秒台突入も現実的になってくる。ラスト50メートルに31秒台という驚異的な記録を持つチュプコフだが、さらに伸ばすのは容易ではない。王者にプレッシャーをかけるには十分な記録だった。

残念だったのは、前世界記録保持者で世界でもメダルをとってきた渡辺。ラストに強い隣のコースの武良を意識しすぎたのか、80メートルあたりで急にスピードをゆるめた。終盤に力を残すつもりだったのかもしれないが、100~150メートルもいつもの泳ぎではなく、勝負をかけたはずのラスト50メートルも失速してしまった。

100メートル3位の渡辺は、2位に飛び込んだ武良を意識しすぎていたのかもしれない。もし隣のコースが佐藤なら、ついていくだけで良かった。準決勝の結果で武良の隣を泳ぐことになったことが、影響したのかもしれない。逆に「2強」にはさまれプレッシャーがかかると思っていた武良は、最後まで自分のペースを守った。それが、2位という結果につながった。

佐藤も武良もこの1年で急成長した。もし大会の延期がなかったら、男子平泳ぎの顔触れはまったく違っていた。渡辺と小関也朱篤で決まっていた可能性もある。1年伸びた影響はもちろんだが、何が起こるかわからないのが五輪選考会の怖さだ。(84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪平泳ぎ代表)