12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪柔道男子66キロ級銅メダルで、73キロ級の海老沼匡(31=パーク24)が15日、都内のパーク24本社で記者会見を行い、現役引退を発表した。

同席した92年バルセロナ五輪男子78キロ級金メダルの吉田秀彦総監督(51)は、功労者の海老沼に感謝の言葉を伝えた。

「創部3年目で匡が入ってきて、普通では考えられなかった。強豪の実業団ではなく、何もない柔道部でパーク24の基礎を作ってくれた。柔道では誰もが認める真面目で試合では覚悟を持って戦う。何をとっても見本になる男だった」

先月24日には柔道私塾「講道学舎」の先輩で、92年バルセロナ五輪71キロ級金メダルの古賀稔彦さんが53歳で死去した。その11日後、「勝っても負けても引退」と決めていた海老沼は、全日本選抜体重別選手権で初優勝を飾った。畳横のコーチ席にいた吉田総監督は、海老沼が畳から下りると涙しながら熱く抱擁した。

「匡は古賀先輩と同じ中量級で、選抜は自分の中でもすごく気持ちが入った大会だった。優勝して引退してもらいたいという気持ちで一杯で、思わず抱きしめてしまった」。

これまで選手と所属コーチを兼任していた海老沼は今後、コーチに専念する。吉田総監督は、立派な指導者になるためも海外での勉強を助言し、「次は自身でなし得なかった五輪金メダルをパーク24から出してほしい」と期待した。

約1時間の会見で、海老沼は終始すがすがしい表情で質疑応答に応じていたが、その一方で吉田総監督は愛弟子の現役引退に感極まって、時折涙する場面もあった。