男子フリーで宇野昌磨(23=トヨタ自動車)が来季へ発奮材料を得た。164・96点を記録し6位。息を荒らげた演技後は頭上を見つめ「日本にはたくさんうまい選手がいる。本当に皆さんに申し訳ない」と仲間を思った。冒頭に挑んだ、大技のトリプルアクセル(3回転半)-4回転トーループは2つ目で転倒。2本目の4回転トーループも氷に体を打ちつけ、自らへ言い聞かせるように発した。

「いい形で終わらなかったことを、逆にプラスにつなげられるようにしたい」

共に歩んだ曲の集大成だった。昨季から演じる「ダンシング・オン・マイ・オウン」。19年春に山田満知子、樋口美穂子両コーチから巣立ち、1人で国際試合に臨んだこともあった。時に涙し、時に喜んだ。20年から本格的に師事したステファン・ランビエル・コーチの下でも、この曲に感情を込めた。北京五輪シーズンとなる来季は演目の変更を予定。名残惜しさの前に「練習でやってきたことの100%を、いつも出せない」と悔しさが先に来た。

それでも明日はやってくる。冒頭の大技挑戦も将来的にアクセル、ルッツ以外の4回転4種を組み込んだ際、基礎点のアップを考えてのことだ。今の伸びしろは未来への原動力になる。

「世界選手権(4位)や全日本選手権(2位)で感じたのは、トップまでの力不足。『もっと成長したい』という気持ちを持ったまま、シーズンオフを過ごしたい。ちゃんと休んで、ちゃんと練習したい。頑張ることも大切だけれど、もっと、フィギュアスケートを楽しめるようにしたい」

勝負の来季へ、宇野は歩みを止めない。【松本航】