92年バルセロナ五輪柔道男子71キロ級金メダルで、先月24日に53歳で死去した古賀稔彦さんの長男で73キロ級の颯人(はやと、23=慶応高教)は、初戦の2回戦で14年講道館杯100キロ超級覇者の岩尾敬太(30=京葉ガス)に指導3による反則負けを喫した。

颯人は体重差50キロ以上ある相手に得意の内股などを仕掛けたが、攻め手に欠き指導を重ねた。「一言で言うと、全日本選手権に臨む気持ちが甘かった。体の大きさ、テクニックで相手に圧倒された…」と唇をかんだ。

昨年6月に全日本選手権の挑戦を決意した。古賀さんにも伝え「狙えるんじゃないか」と背中を押されたという。慶応高で保健体育を教えながら、母校の日体大で稽古を積んだ。今月4日の神奈川県予選を優勝して、関東地区予選の切符を獲得。同じ日に次男の玄暉(げんき、22=旭化成)も全日本選抜体重別選手権60キロ級を初制覇し、6月の世界選手権(ブダペスト)代表に選出された。

4月29日は、「特別な日」でもあった。31年前の90年4月29日の全日本選手権決勝では、亡き父が体重差54キロの小川直也と7分超の熱戦を繰り広げて伝説を作った。

父の背中を追った颯人は関東予選で上位6位までに入れば、本戦の出場権を得られたが、無念の敗北となった。

「父はもっとレベルの高いところで決勝までいった。実際、(重量級との対戦を)体感してみると改めて『すごいことだな』と実感した。かなわないことだが、その時の父と組み合ってみたかった」

柔道界のスターのDNAを継ぐ23歳の全日本挑戦は、来年以降に持ち越しとなった。