男子テニスで、16年リオデジャネイロ五輪シングルス銅メダルの錦織圭(31=日清食品)が10日、出場しているイタリア国際1回戦に勝った後の会見で、東京五輪開催について「(新型コロナで)死者がこれだけ出ているということを考えれば、死人が出てまでも行われることではない」と、疑問符を投げかけた。

錦織は、昨年8月に、拠点とする米フロリダで新型コロナに感染。味覚異常が続いた経験を持つため、「究極を言えば、(五輪期間中に)1人でも感染者が出るなら、気は進まない。コロナが患者が出ない時にやるべきかなとは思う」と強調する。

もちろん、「アスリートのことだけを考えれば、やれた方がいい」と、五輪出場が悲願の選手たちに理解は示す。ただ、「どのような話し合いが行われているのか、どんな(感染対策の)バブルができるのかが分からない」と、東京都や組織委員会から発信が少ないことに戸惑いは大きい。

テニスは、昨年の8月にニューヨークで行われた全米を初めとして、今年の全豪など、感染対策を施した大会を開催する先駆でもある。しかし、それでも「今も大会中に(感染者が)数人出たりする」。だから、どんなに厳密な感染対策を取っても「出るリスクはあるし、選手村で出たら簡単に広がる」と警戒を強めた。

 

◇錦織の新型コロナウイルス感染 昨年8月に感染したことを自身の公式アプリで明らかにした。体調不良に加え38度近くの発熱があり、拠点とする米フロリダで検査を受けて陽性反応が出た。出場予定だった全米オープンを欠場した。当時について「最高37・9度まで熱が出て検査に行った。陽性と聞いてびっくり。発熱から4~5日ぐらいで動き回れるぐらいになった。ただ良くなってから味覚がなくなった。食べ物によっては土を食べているみたいだったが、それも4、5日で戻った」と話した。同9月のオーストリアのツアー大会で復帰した。