NBAウィザーズに所属する八村塁(23)の2年目のシーズンが終わった。日本選手として初めて出場したプレーオフでの奮闘ぶりや来季への期待、そして東京五輪日本代表として求められる役割について、NBAコメンテーターの塚本清彦氏が語った。

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ポストシーズンの八村は、レギュラーシーズン以上に積極性が光った。セブンティシクサーズとのプレーオフでは攻撃力の高いハリスらに対して守備で奮闘しつつ、得点にもどんどん絡んでいき、3点シュート成功率は5試合で60パーセントに及んだ。

ウィザーズが勝利を挙げた第4戦、ダンクをたたき込んだ八村が雄たけびをあげたシーンは涙が出そうになった。相手選手がいた方向に叫んだことでテクニカルファウルを取られてしまったとは言え、内向的と言われる日本人が、最高峰の舞台で堂々とプレーし、気迫をはじけさせた。私が明大で指揮を執っていた当時、八村が主力として活躍する明成高(現・仙台大明成高)と何度も練習試合を行い、ゴンザガ大進学後はNCAAの解説などを通じて成長ぶりを伝えてきた。その彼が、今ここまで高い場所にたどり着いていると思うと心が震えた。

コロナ禍やけがで難しいシーズンだったが、シーズン終盤に向かうほど安定感が増した。調子の波をさらに小さくすることができれば、3年目はコンスタントに1試合20得点を挙げられる選手に成長するはずだ。

夏にはいよいよ東京五輪を迎える。ウィザーズではビールとウエストブルックに次ぐ3番手の存在だが、日本代表ではエースとしての役割が求められ、対戦相手からのマークも一層厳しくなる。重圧も感じるだろうが、19年中国W杯から積み上げてきた2年間の経験をどう発揮してくれるのか、期待感でいっぱいだ。

 

◆塚本清彦(つかもと・きよひこ)1961年(昭36)2月26日生まれ。兵庫県出身。育英高から明大を経て日本鋼管に入社。ポジションは主にポイントガードを務め、日本リーグ優勝2度、93-94シーズンにベスト5。96年引退。明大、法大の監督を経て、現在はテレビやインターネット放送でNBAやBリーグの解説を行う。