前回大会2位の三浦佳生(かお、16=東京・目黒日大高)が、ショートプログラム(SP)7位からの大逆転で初優勝を飾った。

フリーは2位に18・73点差をつける165・28点を記録し、合計229・28点。SP首位で総合2位となった壺井達也(神戸大)を1・68点上回った。演技直後はさけび、得点発表後には男泣き。最終組が終わって1位が確定し「優勝できると思っていなかったので、なんか『俺!?』みたいな。体がふわふわしていました」と笑顔で振り返った。

「本当に不安が大きかった。『1年間やってきたことが無駄だったんじゃないか』と思ったけれど、ほっとした気持ちと、うれしさでいっぱいです」

失意の演技から一夜明け、覚悟を決めた。SPでは氷上の穴にはまり、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が1回転半になるミス。ジャンプが3つに限られるSPで、アクセルは0点と取りこぼした。SP7位でフリー最終組に入ることすらできなかった。前週はシニアのグランプリ(GP)シリーズNHK杯に出場。優勝を自らに課した大会でいきなりつまずき、やるせない思いが募った。

支えはコーチ、友人だった。励ましを受け、2学年上の鍵山優真(18)がSP7位から大逆転優勝を飾った、今季のGP第3戦イタリア大会が頭をよぎった。

「優真がショート(SP)7位から巻き上げて優勝っていうのを見て『まだまだ分からない』という気持ちが僕にも芽生えました」

この日は6分間練習、前の選手が得点発表を待つ間を使い、氷に目を向けた。これまで意識的にやっていなかった確認作業だった。

迎えたフリー。冒頭で3回転半を決めて「いける!」と確信した。続く4回転サルコー、4回転-3回転の連続トーループも成功させた。演技後半は4回転トーループで転倒し、体を壁にぶつけたが「全く痛くなくて『次のジャンプ!』と頭も切り替わっていた」。こだわりの演目「ポエタ」を演じきり、立ち上がった観客から拍手をもらった。

「全日本ジュニアは1年に1回。ショートが終わった時は『これで優勝がなくなった』と考えました。諦めずにやることが大切と、今回あらためて学びました。この経験をしたおかげで、今日は穴を確認して臨めた。長い目で見た時には『良かった』と思えました」

歴史に残るフリーの好演技で、次の目標が見えた。

「全日本選手権(12月、埼玉)で(フリー)最終グループに入るのと、世界ジュニア選手権(22年3月、ブルガリア)で表彰台に上がるのが目標です」

将来を期待される高校1年生が、自らの手で大切な宝物を手にした。【松本航】