新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」がアフリカや欧州で急拡大し、政府が29日に外国人の入国を30日午前0時から禁止すると決めたことを受け、国内のスポーツ競技団体が対応を迫られた。日本スケート連盟は12月にフィギュアのグランプリ(GP)ファイナル(9~12日、大阪・東和薬品ラクタブドーム)を主管。特例措置で予定通り開催の可能性は残るが、流動的な状況の注視を余儀なくされた。22年北京五輪を前に、再びスポーツ界がコロナに襲われた。

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岸田文雄首相の突然の表明に、スケート連盟は関係省庁への確認や情報収集に追われた。主管するGPファイナルの開催準備が大詰めを迎える中、全世界を対象にした外国人の入国制限が決定。男子は世界選手権3連覇のネーサン・チェン(米国)ら4選手、女子は世界記録更新の15歳カミラ・ワリエワ(ロシア)ら5選手、ペア5組、アイスダンス6組が来日予定だったが、先が見えなくなった。

公式練習が始まる来月8日まで10日を切った段階での政府発表。連盟関係者は「全く情報がない」と困惑した。今年4月にも大阪でフィギュアの世界国別対抗戦を主管し、東京五輪に向けた通称「アスリートトラック」を活用して5カ国から選手を受け入れた実績はある。関係者によると、前回同様の個別特例措置がスポーツ庁や厚生労働省から認められ、予定通り開催できる可能性は残るが「今日の今日の話で…。うかがいは立てたけど、本当にどうなるか分からない。言えることがない」と戸惑った。

日本からは男子の鍵山優真と宇野昌磨、女子の坂本花織、日本人同士のペアとして初めて三浦璃来、木原龍一組が進出を決めたばかりだった。北京五輪の代表選考に関わる大会で、開催可否の影響は小さくない。

スピードスケートの代表候補も来月12日までW杯で米国、カナダを転戦。帰国後、待機期間の緩和をへて27日からの五輪代表選考会で切符を争う段取りだが、待機期間が例外なく14日間となれば、カナダのカルガリーで行われるW杯を回避せざるを得ない状況にもなってくる。冬季競技もコロナ禍に見舞われたスポーツ界。展開次第で選手の命運が左右される。【木下淳】

◆アスリートなどの入国特例

コロナ禍で厳しい入国制限が行われている中、東京五輪・パラリンピックに向け、昨年11月から一部対象者の入国を条件付きで認めていた。アスリート用東京オリパラ準備トラック(通称アスリートトラック)という特例制度で、国内で開催される国際大会に出場する日本人及び外国人選手やスタッフ、五輪の強化指定選手、プロ野球、サッカーJリーグの外国人選手らが対象だった。必要な防疫措置を講じた上での入国を認め、入国後14日間の自主待機期間中でも、試合出場などの活動を可能とした。行動範囲も制限され、誓約書や活動計画書の事前提出などが求められた。今回の特例可否は未定。