フィギュアスケート男子で冬季オリンピック(五輪)2連覇の羽生結弦(27=ANA)が、前人未到のクワッドアクセル(4回転半=4A)に公の場で初めて着氷した。今日24日のショートプログラム(SP)で252日ぶりに競技復帰する全日本選手権(さいたまスーパーアリーナ)が23日、開幕。公式練習で4回転半を片足で降り、最終日26日のフリーに投入すると宣言した。過去に避けてきた、3連覇が懸かる来年2月の北京五輪を目指すことも初めて明言した。

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羽生が助走を取るたび、空気が張りつめた。練習時間残り10分、急に1回転半を跳んだ。次も。明らかに慣らしている。観客の入場が始まっていたが、その瞬間だけ静まりかえる。5本の調整後、一気に回転数を上げた。緩やかな助走、カウンター(体を反転させる動き)から前を向き、跳び上がった。4回転半だ。1回目は両足着氷、2回目も両足、続く3回目に片足で着氷して終えた。公の場で降りたのは初めてだった。

回転が足りず「成功」ではないが、代名詞の3回転半より長い滞空時間と鋭さに拍手が送られた。右足首負傷からの復帰初戦。その初日から大技を試みた。19年12月、21年4月以来3度目の挑戦。これまで転倒したり回転が抜けたりしていたが、初めて立って降りた。

 

◆4回転×6種類初めての成功者

・トーループ

カート・ブラウニング

88年 世界選手権 カナダ

・サルコー

ティモシー・ゲーブル

97年 ジュニアファイナルGP 米国

・ルッツ

ブランドン・ムロズ

11年 全米協会主催大会 米国

・フリップ

宇野昌磨

16年 チームチャレンジカップ 日本

・ループ

羽生結弦

16年 オータム・クラシック 日本

・アクセル

成功者なし

 

◆羽生のクワッドアクセル(4回転半) 6種類ある4回転ジャンプの中で唯一、成功者がいない現在最高難度のジャンプを世界で初めて跳ぼうとしている。基礎点は国際スケート連盟(ISU)が定める中で最高の12・50点。同ルッツの11・50点を上回る。3回転半は8・80点。唯一、左足で前向きに踏み切るジャンプで、降りる際はほかと同じ後ろ向きのため半回転多い。幼少時から「アクセルは王様のジャンプ」と都築章一郎コーチの指導を受けてきた影響も大きい。羽生はトーループ、サルコー、ループ、ルッツを習得済み。ループは16年に自身が世界で初めて成功した。