オーストラリア政府のアレックス・ホーク移民相が14日、テニスの男子世界王者、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)のオーストラリアへの入国査証(ビザ)を再び取り消した。ジョコビッチの17日に開幕する全豪への出場は、非常に微妙になった。ジョコビッチ側は、再び裁判所に訴えるとみられる。

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ジョコビッチの新型コロナウイルスを軽視するような言動と、今回の渡豪は分けて考える必要がある。渡豪という行動を取ったことは、少なくともジョコビッチ自身に責任はないのではないか。

問題は、全豪主催者のオーストラリア・テニス協会とビクトリア州だ。

協会は、昨年11月に、政府に「過去の感染がワクチン免除の理由になるか」を問うている。それに対し、政府は2回にわたり、「理由にならない」という文書を送っており、それは地元メディアが現物を公開していることでも明らかだ。

事実上、政府に断られた協会は、今度はビクトリア州に同じ質問を投げかけた。同州の保健相から「理由になる」という回答を受け取っている。これに基づき、審査委員会から承認され、ジョコビッチにビザ発行の手続きを取った。それを受けて、ジョコビッチは機上の人になっている。

オーストラリアは非常に地方自治が強く、新型コロナ感染対策も、国の連邦政府と州政府が食い違うことが多い。しかし、まず国の判断が最優先。政府から2度も免除の理由にならないと言われながら、なぜ協会はビザ発給にこだわったのか。全豪をジョコビッチの最多21度目の4大大会優勝の舞台にしたかったと勘ぐられても仕方ないだろう。【吉松忠弘】