北京オリンピック(五輪)スピードスケート女子5000メートルに出場した堀川桃香(18)が5日、出身地の大樹町での五輪出場報告会に出席した。当初、入社が決まっていた日本電産サンキョーが、白樺学園高卒業式当日の1日に、3月いっぱいでの廃部を発表。急きょ新たな進路を探し翌2日、今春からの富士急入りが内定した。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪でのメダル獲得に向け、北京五輪女子1000メートルで金メダルを獲得した高木美帆(27=日体大職)の技術を吸収し、力をつけていく。

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故郷で応援してくれた家族や町民の前で、堀川は力強く誓った。「(北京五輪5000メートルに出場した)2月10日からミラノ・コルティナダンペッツォへの挑戦は始まっている。メダルを取りたい。まずは今季、世界距離別で表彰台に乗ることから。つらいことから逃げ出さず4年後は違う景色が見られるように頑張りたい」。昨年、本格的に始めた5000メートルで、五輪まで4レースすべて自己新という成長株が、さらにスキルを上げ五輪の表彰台を狙う。

次代のエースを見据える。北京から帰国後の自主隔離中、日本のエースから貴重な言葉をもらった。高校のサイトに、あこがれの選手として高木美の画像を載せたいと本人に相談。すると、LINE(ライン)で「あこがれるだけでは、その人に近づけても、超えられない。私を超えてきてね」と返ってきた。堀川は「私の中で何かが動いた」。得意の1500、3000メートルは高木美と重なる。4年後、8年後は自身がエースに取って代わるんだという、強い覚悟が芽生えた。

北京では、その高木美が女子1000メートルで金メダルを獲得した瞬間を見届けた。「私もいつか、ああなりたい。(高木美と)練習で一緒に滑る機会もあった。コーナーの滑らせ方がうまい。映像などを見て少しずつ盗んでいけたら」。世界一のテクニックを身に付け、メダルをたぐり寄せる。

卒業式の日に自身の進路が消滅するという事態に見舞われたが、すぐに解決。新天地の富士急は叔母の友里さん(45)が所属していた縁のあるチームだ。「高校2年のときに大学か実業団で進路を迷っていて、叔母から『本気でやるなら実業団がいいよ』とアドバイスを受けた。それが実業団に進むきっかけになった」。長兄大地(22)、次兄翼(21=いずれも専大)も一線で活躍するスケーター一家。抜群のDNAを持つ18歳が、世界の頂を見据え、心身ともに磨きをかけていく。【永野高輔】

◆堀川桃香(ほりかわ・ももか)2003年(平15)7月10日、大樹町生まれ。4歳からスピードスケートを始める。大樹中2、3年時に全国中学女子3000メートル2連覇。白樺学園に進み1、2年で高校総体1500、3000メートルの2種目で2連覇。21年12月の北京五輪日本代表選考会の5000メートルで日本ジュニア記録となる7分10秒49をマークし、全体2位で北京五輪出場権を獲得。同五輪は、さらに自己ベストを更新する7分6秒92で10位。164センチ、65キロ。右利き。家族は両親と兄2人、姉、弟。

◆富士急スケート部 1968年(昭43)創部。92年アルベールビル大会女子1500メートル銅の橋本聖子、98年長野大会女子500メートル銅の岡崎朋美、平昌大会女子団体追い抜き金の菊池彩花らの五輪メダリストを輩出してきた女子の名門。北京では押切美沙紀(29)とショートトラックの菊池純礼(26)が代表となり、84年のサラエボ大会から11大会連続でオリンピアンを輩出。活動拠点は山梨・富士吉田市にある屋外リンク「富士急ハイランドセイコオーバル」。

▼無事に進路が決まり、家族や恩師も安堵(あんど)した。報告会には父拓生さん、母智子さん(ともに48)、長兄大地(専大4年)もかけつけた。拓生さんは「スケートに専念できる環境に入れてもらえて安心しています」。智子さんは「4年後や8年後(候補になっている)札幌五輪に出場してくれたら」と期待した。移籍先探しに奔走した白樺学園の和田貴志監督(45)は「富士急さんに話をして、その日に決めてもらった。感謝です」と振り返った。