「青髪」の北條巧(26=NTT東日本・NTT西日本)が、観客を沸かせた。スイムからトップ集団につけ、ランでは東京五輪男子のメダリストと競り合う積極的なレース。終盤疲れて17位に終わったが、パリ五輪のメダルを目指して手ごたえを口にした。男子日本勢トップは小田倉真(28)で9位。女子は高橋侑子(30)の20位がトップだった。

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「頑張れー」。沿道の観客の声援に押されて、北條は世界のトップに食らいついた。8位以内の入賞圏内で迎えたラン終盤。東京五輪銅メダルのヘイデン・ワイルド(ニュージーランド)がスピードを上げると「ついていかないと、メダルは見えてこない」。必死の猛追が大会を盛り上げた。

疲れて後続に次々と抜かれて17位。「6位以内狙いだったので結果は悔しい」と言いながらも「攻めた中で自分の力は出し切れた」と満足そうに話した。「ストレスなく、いつも通りにできた」と笑顔さえ見せて言った。

期待された東京五輪出場を逃し、昨年練習拠点を海外に移した。多国籍のチームに属して、他国のライバルと競う。「メンタルも変わった。外国選手相手にも緊張はない。去年までとは違う感覚です」と胸を張った。

青髪に青いマニキュア。「海外の選手にも知られてきた。『北條プレー』と言われるまで、浸透させたい」。競技を始めたころの目標が「24年五輪でメダル獲得」。2年後に向けて「手ごたえはある」。低迷してきた男子に、ド派手なけん引役が登場した。

◆北條巧(ほうじょう・たくみ)1996年(平8)4月7日、埼玉・北本市生まれ。熊谷高までは競泳歴は14年。日体大入学と同時にトライアスロンに転向した。18年にU23アジア選手権で優勝し、同年の日本選手権で初優勝。X JAPANなどの音楽が好きで、青髪はギタリストのMIYAVIに由来。173センチ、62キロ

〇…粘りの走りで9位に入った小田倉は「冷静に走れた」と話した。日本男子の1ケタ順位は横浜大会初、世界シリーズでも12年マドリード大会7位の田山寛豪以来2人目の快挙だが「1つでも順位を上げることだけを考えた」と振り返った。19位の東京五輪後は「引退も考えた」が、ビデオを見ていて「まだできる」と翻意。「パリ五輪は考えず、目の前のレースに集中したい」と話した。

〇…同時に行われた世界パラシリーズの運動機能障害PTS4で、東京パラ銀メダルの宇田秀生が3位に入った。多忙と休養で練習は十分ではなく「まだまだですね」。この日は有観客で家族も観客席で応援。「見てもらえるのはうれしいし、力になる。やっぱり、観客がいないと」と、笑顔で話していた。

〇…女子のエース高橋は20位に終わり「課題が見えたレースだった」と振り返った。バイクで先頭集団に入れず、ずるずると後退。「スイムから流れに乗ることができなかった」と話した。昨年は念願の五輪出場を果たしたが「あっという間、終わっちゃったという感じでした」。大黒柱の上田藍が五輪舞台を離れただけに、パリ五輪への期待も大きいが「パリを考えず、1つ1つのレースをこなしたい」と話した。

〇…大会にはウクライナも参加、ロシアの侵攻時にトルコ合宿中だったパラ2選手が出場した。世界トライアスロンの大塚真一郎副会長によれば、侵攻後に同国の選手が日本での主要なスポーツ大会に出場するのは初めて。男子視覚障害のワルフォロミエイエフは大会側から渡航費と滞在費の支援を受け「出場できたことに感謝している」と話していた。