東福岡が6大会ぶりに覇権を奪回した。試合開始36秒、フランカー大川虎拓郎主将(3年)のチャージから先制トライを奪い、後半に4トライを量産。緑のジャージーの戦士が強固なディフェンスで壁となる“グリーン・ウオール”で報徳学園(兵庫)を1トライに封じ、完勝だ。

全国屈指の強豪が連続V逸を5大会で止め、大会史上3位タイとなる7度目の優勝をもぎ取った。

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しんどい終盤に東福岡の緑のジャージーが躍動した。2点差に迫られた後半10分。SO高本とわ(3年)が、報徳学園のDFライン裏へショートパント。走り込んだCTB西柊太郎(3年)がキャッチ、インゴールに飛び込んだ。同18分には縦にフェーズを重ね、左に回してWTB上嶋友也(3年)がトライ。その後2本と一気の4トライで突き放した。

藤田雄一郎監督(50)は「足が残ってましたね」と喜んだ。コロナ禍による辞退で報徳学園に不戦敗した3月選抜決勝の“再戦”で、7月7人制決勝のリベンジマッチ。鍛え上げた底力が、正念場で爆発した。

高校日本代表候補10人がいて、5大会連続準決勝で負けた1年前。藤田監督らスタッフは「戦い方をなおさないといけない」と変革に動きだした。「アタック」を代名詞に、07年度から16年度の10大会で6度も優勝したチームが、練習の7~8割を守備に充てた。「ボールを持っていない時、ハッピーになろう」を合言葉に、キックでエリアをとり、相手に球を持たせ、守備でつぶす。今年も同候補は8人いたが、緑のジャージー15人が体を張って守る「グリーン・ウオール」としてのスタイルを身につけた。

決勝戦はメンバー交代しなかった。前日6日のミーティングで同監督が「最後は1番強い15人で戦いきろう」とフィフティーンを鼓舞した。疲労がたまった大会5戦目。しかし、3トライを挙げたWTB上嶋は「今日が1番楽しかった」と笑う。開始36秒の先制トライを呼ぶキックチャージを決めたフランカー大川虎拓郎主将(3年)も「出来は1番良かった。中盤に耐えられて、集大成になった」と胸を張る。地味でつらいディフェンス練習が、15人だけでも戦いきれる力になった。

「アタック」から「ディフェンスからのアタック」にかじを切り、6大会ぶりの優勝をもぎ取った。「ウチには多くのタレントが集まってくれるけど、そんなチームがこういう戦いをしたら、当然負ける確率が下がる。相手が攻めていて恐怖を感じるようなディフェンスです」と藤田監督。東福岡は強くなって、王者の座に帰って来た。【加藤裕一】

◆東福岡 1945年(昭20)に前身の福岡米語義塾として創立し、55年から現校名の私立男子校(普通科)。生徒数2000人超。ラグビー部は55年創部で部員143人。花園は優勝7度、準優勝3度。主な卒業生にラグビー藤田慶和、プロ野球村田修一、吉村裕基、サッカー長友佑都ら。サッカー、硬式野球、バレーボール部も強豪。所在地は福岡市博多区東比恵2の24の1。松原功校長。

◆藤田雄一郎(ふじた・ゆういちろう)1972年(昭47)10月17日、福岡県生まれ。東福岡でラグビーを始め、NO8で90年度大会に出場(2回戦敗退)。福岡大卒業後、JR九州をへて98年から同校に保健体育科教論で赴任。コーチで花園を12度経験、12年4月に監督就任。15年に監督で初優勝。家族は妻、長女、長男。

<東福岡の記録>

▼決勝戦の41点 同志社中(28年度・41-0早実)に並ぶ歴代4位の高得点。1位東福岡(14年度・57-5御所実)2位大工大高(現常翔学園、95年度・50-10秋田工)同啓光学園(現常翔啓光学園、01年度・50-17東福岡)。

▼選手交代なし 東福岡は決勝を先発15人だけで戦った。戦術的交代が常識の近年では珍しく、今大会全50試合で準々決勝の天理(8-5長崎北陽台)3回戦の中部大春日丘(8-9佐賀工)1回戦の大津緑洋(15-7富山第一)加治木工(7-0若狭東)城東(24-26倉敷)と登録15人の倉吉東(0-66高鍋)を含む7例目。

 

◆高校3冠 同一年度に春の選抜大会、夏の7人制大会、冬の全国高校ラグビー大会の3大会で優勝すること。過去は14年度、16年度に東福岡が、15年度に東海大大阪仰星が、20年度に桐蔭学園(神奈川)が達成している。