12歳の新星が表彰台に立った。男子決勝で初出場の中学1年、小野寺吟雲(ぎんう)が263・04点で3位に入った。同種目史上最年少でのメダル獲得で、24年パリ・オリンピック(五輪)候補に名乗りを上げた。女子は東京五輪覇者で15歳の西矢椛が、253・30点で銅メダルを獲得した。ともに45秒間に技を連発する「ラン」を2回、一発技の「ベストトリック」を5回滑って頂点を争った。
窮地でも動じない。失敗が出れば表彰台が絶望的となるランの2回目。小野寺は12歳とは思えない精神力で高難度のトリック(技)を繰り出し、87・00点と息を吹き返した。「1本目でミスったけど、2本目で『全決め』できたから、やったと思った」。異次元の心技で大会を沸かせた新星の胸に銅メダルが輝いた。
146センチとひときわ小さな体で世界の猛者に立ち向かった。暫定4位で迎えたベストトリックは、レールに乗る前だけでなく後にも板を回転させるオリジナルの複合技に成功。ダイナミックさで点数を稼ぐライバルに、テクニックで対抗した。
7歳頃から始めた競技で、ケガは数知れない。昨年は南米で大会直前に右肘を骨折して救急搬送されながら「試合に出るために来た」とギプスを断って出場。その翌月に米国での大会で準優勝、マイナビ日本選手権は史上最年少制覇と驚異の忍耐力を発揮してきた。一躍、来夏のパリ五輪のメダル候補に名乗りを上げた。それでも、今後の目標を問われるとこう答えた。「宇宙に行ってスケボーができるように頑張りたい」。夢も規格外だ。
◆小野寺吟雲(おのでら・ぎんう)2010年(平22)2月15日生まれ、横浜市出身。名前は禅語の「龍吟雲起」に由来し「龍が吟ずれば雲が起こるように、自然をも動かす人間になってほしい」との願いが込められている。7歳頃から本格的に滑り始める。昨年はアマチュア最高峰のタンパ・アマ(米国)で準優勝し、日本選手権は初出場で史上最年少優勝。146センチ。
◆早川大輔・日本代表コーチの話 小野寺はトリックの難度と完成度が抜群に良かった。彼しかできないトリックだった。西矢は(苦戦した準々決勝から)切り替えができた。すごく成長した。
<スケートボード・ストリートの24年パリ五輪予選>
来年6月下旬発表の五輪ランキングで男女各20人(いずれも各国・地域最大3)の出場選手が決まる。世界選手権や国際オリンピック委員会(IOC)が導入した五輪予選シリーズなどの対象大会でポイントを獲得。昨年6~7月に第1戦(ローマ)が行われ、今回の世界選手権が第2戦、第3戦は6月にローマで開催予定。