国際フェンシング連盟(FIE)がウクライナへの侵攻に伴って除外されたロシア、ベラルーシ勢の国際大会復帰を決めた10日の臨時総会で、日本が反対票を投じていたことが18日、関係者への取材で分かった。非公開だった議論の詳細も判明し、米国などが復帰に反対意見を示した一方でロシアと関係が深いとされるアフリカ諸国は賛成の意を表明。この問題を巡るスポーツ界の「分断」の構図が、鮮明に表れた。
各国のフェンシングの統括団体が参加した総会はオンラインで実施された。投票前には意見表明の場があり、関係者によると目立ったのはアフリカの国々だ。続々とロシア、ベラルーシの復帰を容認する考えを明かし、中南米の国からも同様の意見があった。復帰賛成派はスポーツと政治を切り離すことや選手の平等を求め、米国や北欧を中心とした反対派は侵攻が終わっていない現状を理由に反論した。日本は意見を述べなかった。
ロシア、ベラルーシ両国に関する投票は、国際オリンピック委員会(IOC)が復帰の条件として検討する「中立」の立場などを前提に<1>選手の個人戦出場<2>選手の団体戦出場<3>審判らスタッフの参加-と3度行われた。順に89対46、85対51、88対48と全て賛成多数で可決。国別対抗の意味合いが強い団体まで出場を認める判断で両国選手は4月から始まる来年のパリ五輪の選考対象大会に出場可能となった。
FIEは、ロシアのプーチン大統領に近いと言われる同国の富豪ウスマノフ氏が停職となった昨年まで14年間会長を務めていた。関係者は「昨年からロシア側の根回しが効いていると感じていたが、団体も含めて全てが認められる決定は予想を超えた」と証言した。
今回の結果を不服としてドイツ連盟が5月上旬に同国で開催予定だった女子フルーレのワールドカップ(W杯)中止を発表するなど、波紋が広がっている。(共同)