男子グレコローマンスタイルの60キロ級で、東京オリンピック(五輪)銀メダルの文田健一郎(ミキハウス)が2大会連続2度目のパリ五輪代表を内定させた。準決勝でゲボルク・グアリビャン(アルメニア)を下し、3位以内を確定させた。
東京五輪銀メダリストは変化を恐れない。文田は得意の反り投げに執着せず、堅実な闘いに徹し、五輪切符を獲得。「これが勝つスタイルなら、僕はそれを貫く」と言い切った。
5月に左脚を負傷して万全ではなかった。初戦は返し技で1-7になる窮地も、相手の脚を触る反則で取り消し。「レスリングの神様がいるならチャンスを絶対に無駄にしない」と覚悟を決め3-1で突破した。
2回戦以降も投げ技を狙わず組み手で圧力をかけて優位に立ち、寝技は相手を担がず確実にローリングで攻めた。集中力抜群の防御で最少失点にとどめる。準決勝を5-1で制し、誇らしげに胸を何度もたたいた。
東京五輪で優勝を逃した悔しさは頭から離れない。昨年の世界選手権は投げ技を封じられて3位。またも涙に暮れた。紙一重の闘いを制するためには、こつこつ得点を重ねるしかない。「地味だし、やっていても面白くない」と自覚するが、勝つために受け入れた。
今年1月に長女が誕生した。「胸を張って、パリに連れて行けるのがすごくうれしい」と安堵(あんど)の表情だ。父となって初の世界一を狙う。