昨季の4大陸選手権とジュニアの世界選手権で2冠を成し遂げた三浦佳生(18=オリエンタルバイオ/目黒日大高)が、伝説!? の「最後4T」を解禁!? した。

前日はショートプログラム(SP)直前に他選手と衝突し、左腰を肉離れ。全日本選手権(12月、長野)につながるブロック大会のため回避できず、強行出場した。この日も状態が心配されたが、気迫がにじむ演技でフリー145・41点、合計227・33点の3位となった。

その演技、最終7回目のジャンプで4回転トーループに挑んだ。予定では2回目に跳ぼうとしていたものだが、負傷中で普段通りのタイミングで跳躍できなかったのだろう。2回転になっていた。ラストワンチャンス、再トライした。

結果は、またしても2回転-。

思い起こされるのが、昨季のワンシーンだ。シニアに本格参戦して1年目。22年10月のグランプリ(GP)シリーズ第1戦スケートアメリカ、第2戦スケートカナダで2連続の銀メダルを獲得した。

鮮烈な印象を残し、GPファイナルにも初出場。SPは3位で、迎えたフリーは4回転トーループ(4T)でミスが出て6位となった。総合は5位。17歳6カ月での日本男子史上最年少となる表彰台に届かなかった。

そのフリーは、後半の最初、全体5回目のトーループが4回転ではなく2回転になった。しかし、最終7回目にリカバリーを試み、再び4回転に挑んだ。

転倒-。

しかし公式記録には「4T」の2文字が刻まれ、最も疲労がたまって苦しい場面のチャレンジは、国内外で称賛された。「最後4T」のワードがツイッター(現X)のトレンドランキングに入るなど、小さくない話題になっていた。

あれから9カ月後の「最後4T」アゲイン。この日は最終7回目のトライも2回転になったため、結果は「最後2T」となったが、間違いなく再現しようとしていた。

「最後の(4回転)トーループ、自分自身は無謀だと思って跳びにいったんで(笑い)。パンクにはなりましたけど、今後は結果が重要視されて、なかなかチャレンジできなくなってくる中で、いろいろなことに挑めたのは、こういう大会ならでは」

試合でしか経験できないことがある。大会の権威は承知の上で極論すれば、全日本選手権(12月、長野)に向けて、通過さえすればいい大会でもある。本人も納得の局面的な挑戦が、国内の公式戦初戦から、けがの功名? で見られた。今季も魅力あふれる、想像の斜め上を行く三浦佳生のスケーティングが期待できそうだ。【木下淳】