2020年夏季五輪の実施競技で最後の1枠を争うレスリングが29日、ロシアのサンクトペテルブルクで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)理事会で3つの最終候補に残った。現地入りした五輪3連覇中の吉田沙保里選手(ALSOK)は「跳び上がるほどうれしかった」と笑顔で関係者と抱き合い「9月が決勝戦」と1競技に絞り込むIOC総会へ意気込んだ。

 国民栄誉賞を受賞した無敵の女王が3つの金メダルを首にさげ、特訓した英語で不慣れなロビー活動を展開した。「五輪存続を求める署名が国内で100万人近く集まり、世界中がレスリングを残してほしいという思いがIOCに伝わった」と結束の力を強調した。

 「人類最強」といわれた元名選手のアレクサンドル・カレリン氏(ロシア)が脚のけがで駆けつけられなかった中、日本協会の福田富昭会長は「3つの金メダルを見せて活動した吉田の存在が大きかった」と感謝した。短期間で組織改革を進めた国際レスリング連盟のラロビッチ会長は目に涙を浮かべて「予選突破」と喜び、「本当の戦いはこれからだ」と気を引き締めた。