北京五輪で連覇を狙う北島康介(25=日本コカ・コーラ)ら日本競泳陣に、想定外の難敵が出現した?

 国際水連(FINA)のマルクレスク事務局長は24日、スピード社の水着を調査する意向を示した。世界新記録が連発した今月の欧州選手権(オランダ)を含め、2月中旬以降に生まれた世界新13のうち12を、同社の最新水着を着た選手が樹立していた。水着と記録の因果関係は解明されていないが、契約の関係でスピード社の水着を着られない日本代表選手にとって、調査結果は気になるところだ。

 25日の欧州選手権最終日も世界新記録が出た。女子50メートル自由形でフェルトハイス(オランダ)が24秒09、同400メートル自由形でペレグリニ(イタリア)が4分1秒53のそれぞれ世界新をマークした。これで今年の世界新13のうち、12がスピード社の最新水着を着た選手が樹立。同選手権男子自由形で3日連続世界新を出したベルナール(フランス)も胴と下半身を覆う同社の最新水着を着用していた。

 FINAはこの水着を既に認可しているが、同事務局長は「トライアスロンのようなスーツが懸念される。浮力の問題があり、再調査が必要だ」と話し、4月の世界短水路選手権(英国)で議論されるとの見通しを示した。

 日本国内の販売契約を結ぶゴールドウイン社によると、この水着は極薄、超軽量で撥水(はっすい)性に優れた素材を使用し、米航空宇宙局(NASA)なども開発に協力したという。浮力との関係を疑問視する声にも、スピード社の幹部は「大会前に新作を発表した昨年の世界選手権でも新記録ラッシュだったが、問題にならなかった。FINAは使用を認めており、誰でも着ることができる」と強気だった。

 FINAでは規定で「推進力や浮力を与える用具」の使用を禁止している。過去にも00年シドニー五輪前に、表面をサメ肌状に加工して水への抵抗を減らした水着が流行し、論争を巻き起こした。この時は問題なしとされたが、男子自由形50、100メートルで3連覇を狙ったポポフ(ロシア)は「選手間で不公平が生まれる」と着用を拒否していた。

 一方、日本水連は競泳日本代表の水着は12年までミズノ、デサント、アシックス3社と合意しており、スピード社の製品は着られない。ある関係者は「世界で一番記録が出ている水着を日本選手が着られないのはどうか」と疑問を投げかけている。