<テニス:全米オープン>◇1日(日本時間2日)◇男子シングルス4回戦◇ニューヨーク、ナショナル・テニスセンター

 錦織圭(18=ソニー)の快進撃がついに止まった。世界17位のフアンマルティン・デルポトロ(19=アルゼンチン)に3-6、4-6、3-6の2時間8分で敗れ、日本男子として22年の清水善造以来86年ぶりのベスト8はならなかった。全米の注目を浴び、日本テニス界の歴史を塗り替えた錦織は、29日開幕のAIGオープン(東京・有明テニスの森公園)出場に備え帰国予定。同大会にはデルポトロも出場を表明しており、地元で雪辱のチャンス。

 力尽きた。4大大会2週目はもちろん初体験で、全力で飛ばしてきた錦織に体力も集中力も残っていなかった。「精神的に疲れて試合に入っていけなかった。体力的にもきつかった」。1歳違いとはいえ、デルポトロは4大大会本戦10度目。2大会目の錦織と経験の差は歴然だった。

 スタートは完ぺきだった。第2ゲームでデルポトロのサーブを破り、一気に3ゲームを連取。しかし実は「何も考えていなかった」。集中力の低下から、その後は後手後手に回る展開 。第1サーブが入らず、自分のリズムを生み出せない。7ゲーム連続で失い、そのまま押し切られた。

 それでも全米初出場の4試合で、その才能は世界をうならせた。豪快なフォアを軸に、予測を超えた多彩なショットで魅了した。空中に跳びはねてたたき込むストロークは見応え十分で、「エア・ケイ」の愛称は全世界に定着した。「この大会で自信もついて精神的にも強くなった」。16強入りで、人生最大の賞金8万ドル(約880万円)を獲得。8日に発表される最新世界ランクでは、自己最高を更新して85位前後まで急上昇する。

 その「エア・ケイ」がAIGオープン出場のため「凱旋(がいせん)」帰国する。3回戦で下したフェレール、この日対戦したデルポトロも参戦を決めており、有明で「全米の再現」や「全米の雪辱」が起こりそう。「日本では、この1大会しかプレーしないので特別な大会」。同大会が73年にツアー公式戦になってから、日本男子の優勝者はいない。その歴史を塗り替える期待も背負う。

 日本テニス協会も、大会を錦織一色に染めるべく準備を進める。錦織の公開練習を中心とした前夜祭を開幕前日の28日に開催する予定。「エア・ケイ」フィーバーで盛り上がることは、間違いなさそうだ。