瀬古対イカンガーが、再現される可能性が出てきた。来年2月にタンザニア・キゴマで難民救済チャリティー駅伝が開催されることが11日、東京・渋谷区の国際連合大学で発表された。発起人で男子マラソン元五輪代表の瀬古利彦氏(52)はレース参加に意欲を示し、タンザニアのジュマ・イカンガー氏(51)に協力を依頼することを明かした。同区間に出場なら、83年福岡国際マラソンでのデッドヒートがよみがえるかもしれない。

 往年の陸上ファンには、たまらない対決だ。80年代のマラソンを沸かせた瀬古、イカンガー両氏が、肩を並べて走るかもしれない。83年福岡国際で、ライバルをゴール前100メートルで抜き去った瀬古氏は「僕が競技場の前で抜いちゃうかもしれないね。もし、彼に時間があれば、1杯飲みたいよ」と、盟友との再戦に思いをはせた。

 タンザニア難民キャンプでのチャリティー駅伝の実現は、瀬古氏の発案がきっかけだった。「難民支援に適したスポーツは何か?」。母校早大のボランティア活動に関わっている縁で、国連難民高等弁務官(UNHCR)駐日事務所から問われ、提案した。「駅伝がいい。イカンガーもタンザニアにいることだし、手伝ってもらえばうまくいくんじゃないか」。

 約2年かけて、実現への道筋が見えてきた。まずは、今月28日に富士山チャリティー駅伝を行う。不要になったTシャツを参加者に持参してもらい、難民キャンプに寄付する。参加料収入の一部を、難民キャンプでの駅伝に使用する。まだ、コースや出場チームも決まっていないが、これから煮詰めていくという。

 瀬古氏が、イカンガー氏に最後に会ったのは、十数年前のポルトガル。北京五輪では関係者を通じて、タンザニア陸連の電話番号とメールアドレスを入手した。「多分、連絡すれば、いい返事をくれる。彼は私のこと、好きですから。私も彼のことが好きだから」。

 イカンガー氏は数年前までタンザニア陸連の専務理事を務めていたが、現在は陸軍のスポーツ部門を統括する立場にある。ともに50歳を超え、当時の走力はない。だが、チャリティー成功のために足並みをそろえることになりそうだ。【佐々木一郎】