フリースタイルスキー・モーグルの上村愛子(28=北野建設)が、採点基準とルールの改正を追い風にする。19日、福島・猪苗代での合宿を公開。今季から採点基準がターン重視に変わる見込みで、ジャンプ台はこれまでより低い高さ60センチに厳格化される。昨季W杯で日本人初の総合優勝を果たした上村にとって、どちらも有利で、10年バンクーバー五輪へ明るい道が開けてきた。

 全身ずぶぬれになりながら、上村は約1時間かけて7度、プールに飛び込んだ。エア練習用のジャンプ台から飛び出し、後方宙返りの空中姿勢を確認する。「試合(W杯)は12月に始まる。ウオータージャンプと雪上がうまくつながるようにしたいです」と、冬のシーズンを見据えた。

 昨季のW杯は、日本人初の総合優勝。終盤は5連勝と無敵だった。今季はさらに追い風が吹きそうだ。高野ヘッドコーチによると、ターン技術でより点差が開くように採点基準が変わる見通し。「上村ほどのターンの技術を持っている選手は、女子には少ない」(高野コーチ)。ターン巧者の上村に有利な流れだ。

 しかも、最高の「お手本」が目の前にある。国際スキー連盟(FIS)が「ターン技術の理想型」として送ってきた映像は、なんと全日本のラハテラ・コーチの姿。02年ソルトレークシティー五輪で金メダルを取った翌年の映像だ。「ジャッジの変更は、我々が目指すものに基準が合ってきた。自信を持っています」という同コーチについていけば間違いない。

 また、あいまいだったジャンプ台の高さ60センチが厳格化され、直前のコブからの距離も縮まる。「いいかげんなターンでは、踏み切れない。ジャンプより、ターン(の比重)が大きくなった」(高野コーチ)。合宿地のウオータージャンプ台は、この高さに設定され、準備は万全だ。

 「(ジャンプ台の高さは)そんなに困らない。しっかりエアの練習をすれば、ターンにも影響は出ない」と上村。今季は出遅れ気味だったが「体が急ピッチで仕上がってきた。あせらず、着実にやります」。来年3月に猪苗代で世界選手権があり、メダルを取れば、バンクーバー五輪代表に内定する。追い風に乗って、W杯連覇とバンクーバーへ向かう。【佐々木一郎】