<陸上:新潟ビッグフェスタ>◇13日◇新潟・東北電力ビッグスワンスタジアム

 期待の新星がロンドン五輪女子マラソンに名乗りを上げた。19歳の絹川愛(ミズノ)が女子1万メートルで31分23秒21のジュニア日本新記録をマーク。日本長距離界の女王・福士加代子(26)に競り勝ち、来夏のベルリン世界選手権の参加標準記録A(A標準)も突破した。仙台育英高時代から指導する渡辺高夫コーチ(61)は、ロンドン五輪でマラソン代表を目指す方針を明かし、同五輪を目指す野口みずき(30)らに挑戦状をたたきつけた。

 まだ細い両腕に力こぶをつくり、絹川がロンドンへと続くゴールを駆け抜けた。「1歩ずつ世界が近づく感じだった。これで自信がついた」。残り200メートルで福士を突き放した。31分23秒21で自身の持つジュニア日本記録を更新。日本歴代9位の好タイムで来夏のベルリン世界選手権のA標準もクリアした。

 4年後の42・195キロへ向けたスタートだった。渡辺コーチは「ロンドン五輪はマラソンで出る」と明かした。トラックは来年の世界選手権で区切りをつけ、10年にもマラソンデビューする計画を立てている。現在は練習でも16キロまでしか走っていないが、今後は20キロ以上のメニューも取り入れていく方針だ。次のステップとして「来年は(1万メートルで)30分台を目標にする」と渡辺コーチ。マラソン挑戦プランを伝え聞いた絹川も「まあ頑張るかって感じです」と前向きに話した。

 悲運を乗り越えて成長した。昨夏は高校3年で大阪世界選手権に1万メートルで出場(14位)したが、今年6月に原因不明のウイルス感染症に冒されて北京五輪への道を閉ざされた。一時は歩くことさえままならない状態。五輪選考レースの日本選手権をテレビ観戦して「私は何でここにいるんだろう」と悔し涙を浮かべた。9月20日に約1年ぶりとなるトラックへ復帰したばかり。早くも完全復活だ。

 あふれそうになった涙は必死でこらえた。「もう泣かないです」。女子マラソン界の救世主候補は、アクシデントを乗り越え、頼もしくなっていた。【太田尚樹】