競泳男子200メートル背泳ぎで、入江陵介(19=近大)が出した世界記録を上回る1分52秒86は、世界記録として公認されなかった。国際水泳連盟(FINA)が22日、「公認しない」と発表した。5月の日豪対抗(オーストラリア・キャンベラ)で、入江はロクテ(米国)の世界記録を1秒08と大幅に更新。だがその際に着用したデサント社の水着がFINAから修正の上、再提出を求められた。この日、改良版の水着は認可されたが、品番号が変わるなど従来品とは別物と扱われた。

 記録についてノーコメントを貫いていたFINAが、ついに決断を下した。この日、ペドロ・アドレガ広報部長は「(入江の記録は)認可されない水着を着て樹立されたため、公認されなかった。その1点に尽きる。もちろん選手は(スポーツ仲裁裁判所=CAS=などに)提訴する権利を持っている」と話した。

 入江は5月10日の日豪対抗200メートル背泳ぎで1分52秒86をマークした。しかし、同20日、デサント社はその際に着用していた水着が「水着に空気をためる効果を発揮する構造をつくってはいけない」というルールに抵触し、改良版の提出を求められたと発表。入江の記録が宙に浮いた状態になっていた。この日のFINAの決定で世界最速タイムは幻に終わった。一方でこのタイムは日本記録には公認されており、日本記録が世界記録を上回る、逆転現象が現実になった。

 くしくもこの日、デサント社は入江が世界最速タイムを出した際の水着の改良版が、FINAから認可されたと発表していた。だが改良版は、全面ラバー製から一部がニット素材に変わっていた。従来品は水も空気も通さないため、水着と体の間に空気をためることができ、それが浮力につながると判断された。改良版は通気性のよい構造となった。同社当該部の坪内課長は「約10人の選手に実際に着用してもらい、性能は落ちていないとの評価だった」と力説。一方でFINAから認可された品番号は従来品とは違い、「別物ですね」とも明かした。その矢先の記録非公認の決定だった。

 入江はもともと、英スピード社のレーザー・レーサー(LZR)を着用していた。日豪対抗は日本水連の規定で国内3社の水着に限定されたため、デサント社製を着用。世界選手権(7月26日開幕、ローマ)では再び、LZRを着用する可能性が高い。そこで正真正銘の世界新を樹立することを目標としている。