<陸上:日本選手権>◇3日目◇27日◇広島広域公園陸上競技場

 五輪2大会連続でメダルを獲得した男子ハンマー投げの室伏広治(34=ミズノ)が、15連覇を達成した。優勝記録の73メートル26は97年以来12年ぶりに75メートルを下回る、ワースト3番目の記録にとどまった。父重信コーチ(63)によると、腰や股(こ)関節を痛めて練習不足だったという。12年ロンドン五輪出場を目標に掲げており、体の状態が万全にならなければ、今年8月の世界選手権(ベルリン)は欠場する可能性も出てきた。

 1投目から5投目まで、室伏は徐々に記録を伸ばしていった。五輪メダリストの底力は、国内ではほかの選手を圧倒し、優勝は危なげなかった。20歳だった95年の初優勝から14年。今年もまた、室伏が表彰台の頂点に立った。

 だが、記録が伸びなかった。優勝記録の73メートル26は自己ベストの84メートル86を11メートル以上も下回る。97年以来、12年ぶりに75メートルを超えられなかった。そこには理由があった。

 室伏

 4年間の疲労の蓄積があります。それだけ、五輪にかけるのは大変ということ。当たり前のように投げているんじゃないんです。輪投げをやってるんじゃないので。それだけ大変なことをしているんだと思ってもらいたいです。

 鉄人は笑みをたたえながら説明した。15連覇-。この偉業はつまり、15年間も16ポンド(7・26キロ)の鉄球を操り、体に負荷をかけてきたことの証明でもある。

 本人は明かさなかったが、父重信コーチによると、1月末に腰を痛め、股(こ)関節にも支障が出た。5月末から軽く投げ始め、本格的な準備期間は1カ月弱しか取れなかったという。「一時は体が完全に曲がった。今年は競技会は無理だと思っていた。手術しようか、どうかという状態でした」と内情を明かした。

 日本陸上界の看板選手ゆえ、周囲の期待は常に大きい。しかし五輪を周期とすれば、無理をする年ではない。事実、04年アテネ五輪で金メダルを獲得した翌05年は、体調が戻らずに世界選手権を欠場した。室伏は「精いっぱい、頑張るしかないです」と言うが、重信コーチは「厳しい。また故障するとまずい」。今後は体と相談しながら、慎重に結論を出す。【佐々木一郎】