【解説】「南米初の五輪開催」という理念で、リオデジャネイロが圧勝した。抱き合い涙にむせぶブラジルのルラ大統領と招致委のヌズマン会長を見ていると、IOCに対する「顔」の必要性をひしひしと感じた。

 同大統領は9月29日に現地入り。先に現地に入っていた会長と積極的にロビー活動を行った。前日入りした鳩山首相、最終プレゼン40分前に到着したオバマ大統領とは熱意の違いを見せた。伏魔殿といわれるIOC。その委員に対し、どれだけ「顔」で勝負できるかが大きなカギだった。

 だが、それだけではない。現地では招致関係者からは、リオデジャネイロで開催するための「できあがっていたシナリオ」という声も漏れてくる。IOCは08年6月、7都市から4都市に絞る1次選考で、5位のリオデジャネイロを4位ドーハに替えて選んだ。9月の評価報告書では、現状よりも希望的観測を入れて高評価を与えた。

 招致関係者の間では「1回目でシカゴを落としたのもシナリオ」という声がささやかれるほどだ。「南米初の五輪開催」という理念はいい。しかし、今回の投票は何だったのかと思ってしまうのも事実だ。【吉松忠弘】