<フィギュアスケート:世界選手権>◇2日目◇24日◇イタリア・トリノ、パラベラ競技場◇男子ショートプログラム(SP)

 【トリノ=広重竜太郎】バンクーバー五輪フィギュアスケート男子の銅メダリスト高橋大輔(24=関大大学院)が、来季からショートプログラム(SP)でも4回転ジャンプに挑戦する。日本男子史上初の優勝がかかる今大会のSPは、ジャンプをすべて成功させる大きなミスのない演技内容で、89・30点と自己3番目の高得点で首位発進した。五輪ではフリーで4回転に果敢に挑んだが、来季はSPにも取り入れる意向。世界的にもSPで成功できる選手は少なく、習得できれば、来年の東京世界選手権でさらに飛躍できる。

 SP1位でもらえるボタン大サイズほどの小さな金メダルを首にさげながら、高橋は新たな野望を口にした。「今日は4回転をしないで点数をもらえて、評価してくれてうれしい。でも来シーズンはSPに4回転を入れたい。もう少し上を目指せる」。銅メダルを獲得した五輪でのSP自己最高の90・25点に迫る89・30点をたたき出しても、さらなる高みを目指す姿勢を見せた。

 SPで4回転に挑む選手は世界的にも限られている。難易度が高く、減点のリスクを避ける傾向にある。五輪ではフリーでも4回転を回避したライサチェク(米国)が金メダル。これに4回転を跳んで銀メダルに終わったプルシェンコ(ロシア)が批判するなど論争が巻き起こった。

 だが高橋が新境地に挑む土壌はできつつある。国際スケート連盟は難易度の高いジャンプへの挑戦を促進させようと、6月の総会で採点ルールを見直す可能性が高い。現状では回転不足のジャンプは1回転少ないジャンプと見なされて大幅な減点になるが、減点幅を縮小する「中間点」が導入されれば、リスクは減る。高橋のジャンプコーチの本田武史氏は「中間点が採用されれば、今の倍の人数が4回転をやるようになる」と話す。高橋は従来の4回転トーループだけでなく、まだ世界でも成功者のいない4回転フリップの練習を始め、東京で世界選手権が開催される来季へ着々と準備を進めている。

 この日のSPではタンゴ調の「Eye」で観客を魅了した。ジャンプもすべて成功。技術点ではジュベールにトップを譲ったが、演技点で他を圧倒した。海外メディアからは「日本にはタンゴの文化がないのに、どうしてできるんだ?」と驚きとともに聞かれ「タンゴだけでなくラテンの曲調が好き。演じることを楽しんでいる」と笑って答えた。世界も認める演技力に、SPでの4回転ジャンプが加われば、高橋が突き抜けた存在になる。