<テニス:東レ・パンパシフィック>◇2日目◇27日◇東京・有明コロシアム◇シングルス1回戦ほか

 驚異のアラフォーだ!

 28日、40歳の誕生日を迎える世界67位のクルム伊達公子(エステティックTBC)が、前祝いを金星で飾った。元女王で同15位のマリア・シャラポワ(23=ロシア)を7-5、3-6、6-3の2時間9分で撃破。シャラポワが04年ウィンブルドンに優勝して以降、日本選手として初の勝ち星を挙げた。大会としては95年優勝以来の勝利だ。28日の2回戦では、同29位のハンチュコバ(27)と対戦する。

 貪欲(どんよく)なまでの勝利への執念だった。40歳を翌日に控えたクルム伊達が、17歳でウィンブルドンを制したクールビューティーに打ち勝った。「30代最後の日に、チャンスをつかむことができた。思い出に残る試合になった」。最後にシャラポワのバックがラインを割ると、思わずガッツポーズが飛び出した。

 お互いに譲らず、ショットが決まる度に、「カモン!」の応酬だ。クルム伊達が、得意のライジングで畳み掛ければ、シャラポワはパワーで対抗した。最大のピンチは、最終セットの第6ゲーム。クルム伊達は2-4にされそうなポイントが3本連続であった。しかし、それを乗り切ると、一気に4ゲームを連取。ベテランの技がパワーとスピードを封じた。

 日本女子がシャラポワに勝つのは、03年の浅越しのぶ以来7年ぶり2人目だ。しかし、シャラポワが04年にウィンブルドンを制して以降は、7度の対戦で、誰も勝ち星を挙げられなかった。その壁を、30代最後の日に、クルム伊達が破った。「常に冷静に判断できた。終始、安定したプレーができた」。まさにベテランの味だった。

 どうしても、ここで勝っておきたい理由がある。昨年、9月の韓国オープンで優勝。その後も、年末に好成績を残し、世界ランクのポイントを合計約600点稼いだ。有効期間は1年。その大量点が、今年の年末にかけて消滅する。今年、昨年以下の成績が続くなら、世界ランクは100位以下に落ちる可能性もある。

 クルム伊達は、復帰後、「4大大会の本戦で戦えるのがモチベーションの1つ」と、常々、話していた。104人前後が直接本戦入りできる4大大会で、100位は、その分岐点となる。来年の全豪のエントリー締め切りは、今年の12月上旬。その時に100位以下なら、2度目の引退もちらつく。

 昨年初戦負けの今大会で、この日の勝利で世界ランクのポイントを69点上積みした。40歳の原動力は、少しでも長く2度目の現役を続行することだ。「10代、20代の時とは明らかに違う。できることはすべてやり、(年齢に)向き合っていくしかない」。年齢は重ねても、勝利へのひた向きな思いは、昔と何も変わっていない。【吉松忠弘】