<アジア大会:競泳>◇男子200メートルバタフライ決勝◇13日◇中国・広州

 【広州(中国)】フェルプス超えだ!

 競泳男子200メートルバタフライで北京五輪銅メダルの松田丈志(26=コスモス薬品)が、今季世界最高の1分54秒02で金メダルを獲得した。世界記録保持者マイケル・フェルプス(米国)が8月のパンパシフィック選手権でマークしたタイムを100分の9秒更新。12年ロンドン五輪での金メダルへ道筋をつけた。

 してやったりだった。松田は電光掲示板で順位を確認すると、中国人に囲まれた数少ない日本応援団に向けガッツポーズ。開幕前には「ブーイングを力に変えたい。ヒール役になる」と語っていた。8月のパンパシフィック選手権で、一緒に泳いだ五輪通算14冠の怪物フェルプスが出したタイムを広州で更新した。

 松田

 この種目では8年前、4年前とも勝てなかったのでうれしい。君が代が聞きたかった。今季ランク1位も目標にしていた。

 50メートルを過ぎて前回覇者の呉鵬(中国)を抜き、逃げ切りに成功した。自身の日本記録に1秒あまり及ばなかったが、今季は高速水着の規定が変更された初年度。1分53秒台に迫る記録は、今後に弾みをつける意味でも十分な価値がある。

 北京五輪で銅メダルを獲得したが、優勝したフェルプスとの差を痛感した。「このままでは北京と同じ成績しか出せない」と、今秋からフォームを改造。フェルプスの泳ぎを参考に、呼吸時に顔をあまり上げず、浅くキック打って体をフラットに保つようにした。体幹を使うパワフル泳法で、水の抵抗を減らせた。

 「一時は現役を辞めることも考えた」という。前所属先の業績悪化に伴って、昨年末で契約が打ち切られた。600社の企業に手紙を書いて、面接に進んだのは数十社のみ。二人三脚でやってきた久世コーチの分の負担と、地元の宮崎・延岡を拠点とする条件が厳しかったが、熱意が通じて10月1日で“就活”が終了。やっと環境が整った。練習する東海SCはボランティア運営の小さなクラブ。松田は大会で獲得した賞金を運営費にも回してきた。少し足踏みしたぶん、ロンドンまで加速する。【大池和幸】