<フィギュアスケート:4大陸選手権>◇最終日◇20日◇台北

 ショートプログラム(SP)2位の浅田真央(20=中京大)は、課題のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を完璧に着氷。今季最高の演技で2位に入り、完全復活を果たし、バンクーバー五輪優勝の金妍児(韓国)が出場予定の3月の世界選手権(東京)へ、金メダル候補が盤石の態勢に入った。

 両手を広げた。表情が崩れた。スタンドに向かって3度も跳びはねた。浅田の感情がリンクに広がった。「今、自分ができることを出し切れました」。前日に見せられなかった笑顔を、何度も振りまいた。呪縛から、ようやく解放された。

 やっと出た最高のトリプルアクセルだった。演技直前、見守る佐藤信夫、久美子両コーチにこう言って出て行った。「SPで跳べなかったトリプルアクセルの悔しさを、しっかり晴らしてきます」。向かった最初の軌道。力強く踏み込んだ。勢いよく回り、確かに氷を踏みしめた。割れんばかりの大歓声に包まれた。

 「100点です。こっちに入ってきて一番いいアクセルだった。この感覚を忘れないようにしないと。世界選手権へつながります」。そう喜んだ浅田に、信夫コーチも「わずかずつですけど、変わってきている。努力したかいがあったのかな」と肩の荷を下ろした。

 この日朝、両コーチから「3-3回転はやめよう」と、高難度の連続ジャンプ回避を諭された。理由は1つ。3回転半と、踏み切りが課題のルッツジャンプだけに集中させるためだった。「今大会の目的はその2つ。いろいろ入れてもダメですから」と久美子コーチ。全日本後に2回転から練習したルッツジャンプは、完璧ではなかったが、減点は最小限。「すごくうれしい」と浅田も目を開いた。

 振付師ニコルさんに手直しされた新フリー「愛の夢」。ミスはあり、回転不足もあった。だが「『恋人がいるように』という振り付けで、すべて好きなポーズを入れている。もうちょっと余裕が出てきたら、もっと感情を込めてできるんじゃないかな」。連覇が懸かる3月の世界選手権前最後の試合で完全復活。1年ぶりの金妍児との対戦は「すごく楽しみ」。満面の笑みは、いつまでも消えなかった。