08年北京五輪柔道男子100キロ超級金メダリストの総合格闘家・石井慧(24=アイダッシュ)が約2年8カ月ぶりに柔道大会へ出場することが18日、確実となった。今月29日(日本時間30日)に開幕する全米柔道体重別選手権(米フロリダ州オーランド)に男子100キロ超級でエントリーした。現在米国修行を続ける石井は、米国で市民権を獲得し、最終的に米国柔道代表として16年リオデジャネイロ五輪に出場する意向を持つ。その第1歩として、北京五輪以来のカムバックを決断した。

 柔道の米国代表を目指し、石井は本格的に動いた。今月29日から2日間にわたって開催される全米柔道体重別選手権に日本代表時と同様、男子100キロ超級でエントリーした。関係者によれば、同選手権出場に米国の市民権や永住権などは必要ないという。昨年8月、格闘技修行のために米国移住を明かした石井は並行して柔道のけいこ再開にも意欲。16年リオデジャネイロ五輪に米国代表として出場する青写真も語ったが、その気持ちは本気だった。

 次戦が決まらないことも、柔道に気持ちが傾いた理由だった。今年1月、米総合格闘技ストライクフォース(SF)のスコット・コーカーCEOと直接会い、出場オファーを受けた。4月1日のSFチャレンジャーズ15(米ストックトン)出場も1度は決まったが、東日本大震災の影響でビザ取得が遅れて欠場。今月26日に開催予定だったSF興行の再オファーも受けた。ところがSFがライバル団体UFCに買収されたことで契約が難航。出場を見送ったこともあり、格闘技と並行して柔道にも本腰を入れることを決意したようだ。

 石井の柔道スタイルであるポイント重視型は、今の世界柔道の流れにおいても有利に働く。現在、組み合う前の抱きつき行為が厳しく判定され、タックル技で帯から下の下半身を直接攻撃した場合も即座に「反則負け」となる。変則スタイルが禁止されたことで、ポイントを意識し、寝技で一本を奪っていた石井の柔道は北京五輪時以上に効果的となりそう。格闘家転向後、柔道の練習をしていない石井だが、パワーと受けの強さで勝ってきた実績もあり、今も十分に通用しそうだ。

 ただリオ五輪で米国代表になるまでの道のりは平たんではない。米国の市民権は永住権取得後、米国内の滞在期間が最低5年間必要。審査期間も約1年かかるため、米国で市民権を獲得し、同五輪に出場することは期間的にもギリギリと言っていい。しかし石井は諦めていない。「格闘技のレベルアップの一環として米国で柔道をやるわけではないです。本気でリオ五輪を目指しています」と関係者を通じたコメントで本気の姿勢を示した。

 全米体重別選手権は今年8月の柔道世界選手権(仏パリ)の選考会を兼ねている。強豪国ではない米国とはいえ、100キロ超級はパワーある選手も多いことが予想される。ここで石井が負ければ五輪金メダリストとしての名誉が傷つく可能性もある。リスクは伴うが、米国を拠点に総合格闘家と柔道家の「二足のわらじ」で最強を目指す意向だ。