<テニス:ウィンブルドン・ジュニア選手権>◇28日◇ロンドン、オールイングランドクラブ

 【ウィンブルドン=吉松忠弘】日本男子に新星が現れた。昨年の男子国別対抗戦ジュニアデ杯(16歳以下)で日本が世界王者になったメンバーで、全日本ジュニア16歳以下覇者の内田海智(16=大産大付高)が、ジュニアのシングルスで日本男子大会初のベスト8に進んだ。コペヤン(17)に6-3、7-5のストレート勝ちで、全仏、全豪のジュニアで8強入りした錦織圭をウィンブルドンで超えた。

 マッチポイントを決めると、いかつい内田の表情が初めて和らいだ。第1、2セットともに自分のサービスゲームを最初に落としてからの逆転勝ちに、思わずガッツポーズだ。日本男子初の8強に「信じられない」。しかし、すぐに「でも目標は優勝なので満足はしていない」と大物ぶりを披露した。

 フォームの柔軟さにはやや欠けるが、ピンチでも自分から仕掛けるハートの強さが魅力だ。ストローク、サーブからネット、ドロップショットと硬軟を巧みに使い分ける技術もある。初戦でシード選手を破り、波に乗った。

 昨年10月のジュニアデ杯決勝で日本NO・1として出場し、5戦全勝。日本を初めて世界一に導く原動力となった。しかし、その後、国内でも勝てない日々が続き、今年の全豪ジュニアは予選で敗退。「同じ年の選手が勝っているのを見て焦った。そこから頑張った」と、反骨精神で今大会の快挙につなげた。

 中学生までは、全国での優勝がほとんどない。「練習嫌いで、トレーニングもしなかった」。しかし、高校に入ってから「練習もまじめに、腹筋、背筋などをやり始めて変わった」。海智という名は、テニスクラブの支配人をしている父博也さん(45)が「海のように心が広く、頭が良くなるように」と名付けた。「ジュニア時代に4大大会ジュニアすべてに勝ちたい」。その夢は、海のように大きい。

 ◆内田海智(うちだ・かいち)

 1994年(平6)8月23日、大阪府交野市生まれ。5歳で父の影響でテニスを始め、09年全日本ジュニア14歳以下複優勝。10年同16歳以下単を制し、ジュニアデ杯で日本NO・1として優勝。好きな選手はフェデラー。180センチ、72キロ。大産大付高2年。