<レスリング:世界選手権>◇5日目◇16日◇トルコ・イスタンブール

 五輪3連覇の敵はルール?

 女子55キロ級で9連覇を達成した吉田沙保里(28=ALSOK)が、勘違いで冷や汗をかいた。「こんなにひやっとしたのは、国際試合では初めてかも」。決勝はアテネ五輪銀のトーニャ・バービーク(カナダ)に大苦戦。第1ピリオド(P)を先取後の第2P。2-0で勝っていながら、タックルを返されて追いつかれた。

 最終Pも、カウンター狙いに徹した相手に、消極姿勢の警告(1点)が出されるなど2-0でリードした。だが、残り3秒で再びタックルを返されて(2点)並ばれた。ここで、吉田はパニックになった。

 レスリングには「ビッグポイント」制があり、同点の場合は大技を決めた選手の勝ち。2点技を食らった吉田は「負けている」と勘違いした。実際は「警告」の方が重く、このままでも勝ちだったが「必死だった」。再開と同時に猛然とタックルし、何とかポイントを奪った。カナダ陣営が時間切れを訴えてビデオ判定になった間が、何より「怖かった」という。「ルールをきちんと把握しておかないとダメですね」と苦笑いした。

 試合中に右肘を痛め、タックルのタイミングも崩し方も読まれていた。厳しく研究もされた。「このままではダメだけど、自分はもっと強くなれるとも思った。いい勉強になった」。これで五輪を含む世界大会で無傷の54連勝、11連覇を達成した。来年のロンドン五輪で「人類最強」アレクサンドル・カレリン氏が持つ世界大会12連覇に挑む。