<男子テニス:スイス室内>◇6日目◇5日◇スイス・バーゼル◇シングルス準決勝

 錦織が日本男子初の大金星だ!

 世界32位の錦織圭(21=ソニー)が、日本男子史上初めて世界1位を破る快挙を達成した。今年、全豪、ウィンブルドン、全米を制し、わずか3敗しかしていないノバク・ジョコビッチ(24=セルビア)相手に、第1セットを落としてから2-6、7-6、6-0の大逆転勝ち。世界ツアーでは、4月の全米クレーコートに続く自身3度目の決勝に進出した。

 何という21歳だ。歴史的な勝利の瞬間も、右手で小さなガッツポーズを繰り出しただけ。まるで当然の勝利のような横綱相撲。ストロークも、サーブも、完全に世界王者を振り切った。今年たった3敗しかしていないジョコビッチに、最後は何と1ゲームも与えない完封勝ち。ジョコビッチのバックがアウトすると、歴史的な快挙が達成された。

 1回戦では、世界7位のベルディハを撃破。3週前の上海大会では、同8位のツォンガに勝った。10月17日には、日本男子最高位を19年ぶりに更新したが、錦織劇場のクライマックスは、それどころではなかった。史上初の世界1位撃破。「第2セットからプレーのレベルが上がった。自信になった」。

 第1セットは自滅だった。世界1位相手に、改良したはずの第1サーブが24%しか入らず。サービスゲームで自ら主導権を奪えずに、1オールから一気に4ゲームを連続で落とした。「あまりいいプレーができなかった」と、ジョコビッチのパワーに圧倒された。

 しかし、第2セットに入ると、錦織の天才といわれる才能が徐々に発揮される。試合中に、相手の展開や癖を見抜き、自らのショットを修正。ジョコビッチのスピードやパワーにも慣れて、リードを奪う。4-2から4オールに追いつかれたが、最後はタイブレークでもぎ取った。

 ジョコビッチは、右肩の故障で武器のサーブが通常よりスピードが出ない。錦織は、そこを付け込むと、最終セットはストロークエースの乱れ打ち。今年、1度もセットを0-6で落としたことのない王者に、1ゲームも与えない完封で、歴史的な勝利を締めくくった。

 92年6月に、ウィンブルドン前哨戦の大会準決勝で、松岡修造が当時世界2位のエドベリに勝ったのが、日本男子の金星最高位。73年に現行のコンピューター世界ランクができて以来、38年間、日本男子は誰も世界1位を破ったことはなかった。世界1位撃破に加え、自身ツアー2勝目も見えてきた。

 ◆錦織圭(にしこり・けい)1989年(平元)12月29日、島根県松江市生まれ。5歳でテニスを始め、13歳で米国にテニス留学。08年2月に日本男子史上2人目のツアー優勝という快挙を達成した。同年全米OPでは日本男子71年ぶりの4回戦進出。09年3月から右ひじの故障で約1年間、実戦から遠ざかった。今年10月17日に世界30位となり、日本男子過去最高位を19年ぶりに更新した。北京五輪代表。178センチ、70キロ。