<フィギュアスケート:グランプリファイナル>◇9日(日本時間10日)◇カナダ・ケベック

 【ケベック(カナダ)=今村健人】悲しみとともに、ファイナルの幕が開いた。男女SPが行われ、浅田真央(21=中京大)の母匡子(きょうこ)さん(享年48)を悼んで、日本選手はジャージーに喪章を付けて臨んだ。外国の選手たちも一様に哀悼の意を表した。浅田が欠場した女子は鈴木明子(26=邦和スポーツランド)が61・30点で2位発進。男子の羽生結弦(ゆづる、17=東北高)と高橋大輔(25=関大大学院)はそれぞれ4、5位だった。

 氷上がどこか寂しげだった。リンクを、悲しみが覆っていた。現地時間の9日早朝、浅田の母匡子さんの訃報が伝わった。情報が少ない残った選手らにとっても、あまりにも急な知らせだった。代表ジャージーの左胸には喪章が付けられた。会場に飾られたままの浅田の横断幕が一層、切なさを募らせた。

 演技を終えた選手は、口々に哀悼の意を表した。SP2位の鈴木は「彼女は滑りたかったと思う。代わりに私が滑ることはできないけど、自分ができることを最後まできちんとしようと心掛けました」。その目は潤んでいた。長年競い、この日首位に立ったコストナー(イタリア)も「言葉がない」と涙を流した。14歳のトゥクタミシェワ(ロシア)は「立ち直り、力強くカムバックしてくれることを願っている」と話した。

 男子も、思いは同じだった。羽生は左胸の喪章に、自身も被災した震災直後、世界選手権で戦う日本選手団の姿を思い出した。「すごく悲しい思いを実感しました」。日頃から匡子さんにかわいがってもらっていた高橋は「自分も最後にお顔を見たかった。浅田さんはお母さんがすごく大好きだった。これからどう向き合っていくのか、すごく心配です」と気遣った。

 国際スケート連盟のチンクアンタ会長は即座に日本連盟の橋本会長へ弔意を伝えた。世界中のスケートファミリーが、悲しみを分かち合おうとしていた。伊東フィギュア委員長は「生前、ずっと二人三脚でやってきた天国のお母さんのために、真央がスケートで頑張ることが一番、喜ばしいことだと思う。精いっぱいバックアップしたい」と話した。ケベックから遠く離れていても、浅田の心へ、誰もが懸命に寄り添っていた。