<テニス:全豪オープン>◇7日目◇22日◇オーストラリア、メルボルン・ナショナルテニスセンター◇混合ダブルス

 夢のコンビがメダル候補に急浮上だ!

 大会推薦で初ペアを結成した混合ダブルスの錦織圭(22=フリー)クルム伊達公子(41=エステティックTBC)組が、初戦で昨年全米オープン準優勝のエドゥアルド・シュワンク、ヒセラ・ドゥルコ(ともにアルゼンチン)組に6-4、6-1で快勝した。混合は今年のロンドン五輪から1924年パリ大会以来の正式種目に復帰。この1勝で日本テニス界に20年アントワープ五輪以来92年ぶりの五輪メダルの期待が一気に高まった。錦織は4大大会自身初のベスト8進出をかけ、今日23日、シングルス4回戦に登場する。

 錦織がシングルスで勝ち上がっているため、2人での練習はなく、まさにぶっつけ本番。それでも世界ランクで日本男女歴代最高位保持者の最強タッグは、圧倒的な強さで快勝した。錦織が「初めてのミックスで1勝。素直にうれしい」と言えば、クルム伊達は「錦織君もわたしもやるべきことをできた」と、19歳年上の姉さんの貫禄で引っ張った。

 ジャンピングショットの“エア・ケイ”、バウンドの上がりっぱなをたたく“ライジング”と2人の武器がさく裂した。第1セット、0-1から一気に5ゲームを連取。クルム伊達が「ダブルスは流れが大事」と言うように、これで完全に主導権は日本ペアに。5-4まで追い上げられたが、最後は錦織が時速161キロのエースで締めくくった。

 これに全米準優勝ペアも戦意喪失した。シングルス4回戦を翌日に控え、普段はクールが売りの錦織も、何度も両手でガッツポーズを繰り出すなどノリノリ状態で「本当に楽しかった」。クルム伊達も際どいところに返球するなど、ベテランらしくチャンスボールを演出し、最後のショットは錦織に任せた。初のコンビながら歯車はばっちりで、アシスト役に徹したクルム伊達は「私は立っているだけで楽だった」と姉さん女房役を見事に果たした。

 いきなりの強豪撃破で、92年ぶりの五輪メダルも見えてきた。ロンドン五輪の混合は今大会の半分の16組だけが出場する。3回勝てばメダルに手が届く。混合は4大大会にしかなく、普段は違った国同士でペアで組むことも多い。そのため五輪では即席ペアが多くなることが予想され、メダルへの期待も高まる。

 五輪の混合ダブルス出場は、シングルス出場選手同士が組むのが原則。現在、世界26位の錦織の五輪出場はほぼ当確で、既にシングルスに関して「できるだけベストを尽くしたい。できればメダルも」と、今から楽しみにしている。クルム伊達は残り半年で、現在の79位から五輪出場圏内といわれる65位以内に上げることが必要になるが、わずか14位上昇だけに今後のツアーで成績を残せば十分出場の可能性はある。「世界ランクが達していないので、まずは、自分のやるべきことをやらないとダメ」とクルム伊達。日本テニスの歴史を塗り替えてきた2人が、五輪での夢のメダルに向け、好発進した。【吉松忠弘】

 ◆ロンドン五輪の出場権

 男女シングルスは各64人、男女ダブルスは各32組、混合ダブルスは16組の出場。シングルスは各国および地域最大4人が出場できる。全仏直後の6月11日のシングルス世界ランキングで、男女各56人が選ばれ、残りは国際テニス連盟の推薦枠が6、第三者委員会推薦枠が2。男女ダブルスおよび混合ダブルスは、シングルス出場選手同士で組むのが原則だが、男女ダブルスはダブルス世界ランクでトップ10の選手は出場権を得る。各国最大6人の出場枠を超えてはならない。