【上海(中国)1日=阿部健吾】真央が「ロシアの最終兵器」を迎え撃つ。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第3戦中国杯は上海で今日2日、開幕する。この日の公式練習で浅田真央(22=中京大)が注目したのは、シニアGPデビューの14歳、ユリア・リプニツカヤ(ロシア)。14年ソチ五輪開催国が送り込むジュニア女王で、驚異の柔軟性を生かした高難度スピンが武器だ。浅田が15歳でシニアデビューしたのは05年の今大会。過去の自分とも重なる新鋭とGP初戦で激突する。

 女子シングルの選手が集った約40分間の公式練習。浅田が入念にジャンプ、ステップを確認するそばで、ひときわ目を引く高速スピンを披露する少女がいた。片手ですら難しいビールマンスピンを両手で、しかも通常はブレードを持つ手は、足首をつかんでいた。スピンだけでなく、2連続3回転を決めるなど、能力の高さをみせつけた。

 リプニツカヤ、14歳。浅田も思わず「昨年のロシア杯のエキシビションでも一緒でした。その時にビックリしました!

 足があそこまで上がるのはすごい」。昨季は大会で1度も転倒せず、世界ジュニア選手権で優勝。ソチ五輪で表彰台の頂点を狙うロシアの逸材に、目を見張った。

 因縁めく。年齢的にはまだ世界選手権には出場できないが、国際経験のためにあえて14歳でシニアGP初戦を踏む。「自分と同じパターン」と浅田。自身も05年、ジュニアながらGPでシニア大会デビュー。しかも、同じ中国杯だった。フリーの曲「くるみ割り人形」は、05年当時に浅田が滑っていた曲で、ビールマンスピンも武器だった。

 この日の公式練習では、代名詞のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は、すべて失敗。「いまはやるつもりはないけど、やってみました」。今季は事前に構成から外しており、「昨年は試合当日に判断していて、負担になっていた。今年は初めからないので」と落ち着いているという。

 「あまり対決という風に感じていないです」。さらりと言った。自身の05年大会は「緊張してたけど、楽しみもあった」と振り返る。日中関係の悪化の影響で普段とは異なる雰囲気での試合にも、笑顔ものぞき、リラックスしているようだった。

 ◆ユリア・リプニツカヤ

 1998年6月5日、ロシア・エカテリンブルク生まれ。4歳で競技を始め、現在はトゥトベリゼ・コーチの元、モスクワで練習に励む。昨季はジュニアGPシリーズで2連勝し、ファイナルも優勝。12年3月の世界ジュニア選手権では総合187・05点の高得点で優勝した。10月にはシニア大会のフィンランディア杯も制した。趣味は乗馬と絵画。158センチ。