<フィギュアスケート:4大陸選手権>◇第1日◇8日◇大阪市中央体育館

 全日本選手権覇者の羽生結弦(18=東北高)が初優勝へ首位発進した。冒頭の4回転ジャンプを鮮やかに決め、終盤にミスは出たが貫禄の87・65点。心身ともに成長していることを証明した。一騎打ちが注目された日本男子のエース高橋大輔(26)は82・62点の4位と出遅れ、リードして今日9日のフリーに挑む。無良崇人(21)は78・03点の8位だった。

 上位3選手がそろい、英語が飛び交う演技後の会見場で、羽生はボソボソと口を動かしていた。聞き耳を立て、通訳される日本語にうなずく。「シャドーイングですよ」。会見終了後にニコッと笑った。

 つまり答え合わせ。シャドーボクシングのように、1人でどれだけ聞き取れるかテストしていた。正解率は「だいたい分かりますよ」。カナダに移住したのは昨年5月。約10カ月で語学力は急成長した。

 終盤の3回転ルッツが1回転になったこの日、「状態はいいのでプラスに考えたい」と余裕があった。理由は精神面の成長も感じていたから。

 直前の6分間練習で3回転ルッツで激しく転倒した。思い出す同じ状況。昨年12月の全日本選手権、フリー前の練習で転び、本番のジャンプも乱れた。優勝にも後悔だけが残った。

 「あの時は緊張した。だから今日は平常心で行こうと思った」。冒頭の4回転トーループは「きれいに決まった」。結果的には「転んだイメージが残っていたのかな」とルッツでミスしたが、全日本のように大きく崩れなかった。滑走後は舌を出して悔しがったが、観客の拍手に「ま、いっか」。経験を力に変えた。

 昨年暮れは連戦に、体調不良も重なり、全日本後には通常55キロの体重が52キロに。心身共に疲弊し、昨年末は10日間完全休養した。ケガ以外では初の長期休みだった。先月16日にカナダに戻り、本格的な練習はまだ3週間。ピークは来月の世界選手権(カナダ)に。だから焦りはない。

 高橋との対決は「自分の演技にとって関係ないのかな。できることをやるだけだから」。だが、SPで高橋を抑えて首位に立った今季2戦はともに優勝。「フリーは練習してきたので、気持ちが楽に明日に向けてやれる」。伸びしろ満載の18歳はさわやかに笑った。【阿部健吾】