13日で来年のソチ五輪まであと300日となりました。季節は雪解けの春を迎え、冬季競技の選手は、重要なプレ五輪シーズンを終えたばかり。その戦いぶりを見てきた担当記者が、「日本一早いソチ五輪メダル予想」でその行方を占います。日本代表は果たして、どれだけのメダルを獲得できるか。<女子フィギュア>

 浅田真央(22=中京大)が、目をぱちくりさせていた。3月世界選手権のフリー演技後。場内の電光掲示板の得点を見た佐藤コーチが隣で「自己ベストだよ」とつぶやく。「視力が悪くて分からなくて、『えっ』となったんですけど…」。6年ぶりに記録を塗り替える134・37点。今季、記者が一番驚かされ、本人も最も驚いた出来事だったのではないかと思う。

 内容は失敗続き。冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は両足着氷、続く連続3回転は単発に。演技の手応えと得点のズレは、可能性を感じる驚きだった。なぜ得点が出たのか。

 10年バンクーバー五輪後、最重視したのは基礎。スケーティング技術などを示す演技構成点に影響する。佐藤門下生になって3年目。シーズンごとのフリーの平均点で見ると、58・76、62・30、66・28点と右肩上がり。先の世界選手権は68・41の自己ベスト更新で、これが高得点につながった。3季かけて「高難度ジャンプの浅田」から、「高難度ジャンプも跳べる浅田」へと成長した証左だ。

 そしてこの演技、本人は「もっと点が伸びたのに」と悔いた。つまり、伸びしろは十分。佐藤コーチは「まだまだこんなことやってみたいなとかがあります」と話す。バンクーバー五輪で記録した1試合3本の3回転半のギネス記録。来季は同様のプログラムを組む方針になるはずだ。3月の世界選手権では優勝した金妍児(韓国)に約22点差。もしギネス演技を完璧に滑れば、数字上は肉薄できる。

 現在女子フィギュア界には2つの潮流がある。高難度の技に挑んで得点を稼ぐタイプと、難度を抑えて技の完成度で勝負するタイプ。浅田は前者、バンクーバー五輪優勝の金は後者だ。浅田には現役女子選手で他に成功者がいない3回転半という武器がある。

 難易度VS完成度-。浅田が口癖の「最高の演技」をしたとき、金メダルの確率が生まれる。現在の3回転半の成功率を考え、いまは50%とした。佐藤コーチに最近聞いた言葉がある。「彼女は全てにおいて、極められるんじゃないかと思うんです」。2度目の五輪で、フィギュアを極めた浅田を見てみたい。【フィギュア担当=阿部健吾】

 ◆演技構成点

 5つの要素で構成される得点。(1)スケーティング技術(2)要素のつなぎ(3)動作(4)振り付けと構成(5)曲の解釈で、0・25点刻みの各10点満点。女子ではSPは0・8倍、フリーは1・6倍して演技構成点として算出される。この得点とジャンプ、ステップ、スピンなどの技術点を合わせたものが各演技の合計得点になる。